コラム

世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも

2026年01月14日(水)20時40分
地球深部探査船「ちきゅう」

南鳥島方面に向けて清水港を出航する地球深部探査船「ちきゅう」(1月12日) Yuka Obayashi-REUTERS

<「レアアース国産化への転換点になり得る」として期待が寄せられる南鳥島沖でのレアアース泥の試験掘削。南鳥島沖のレアアース泥にはどんな特徴があるのか。今回の試掘では何が行われるのか。希少資源である金を海水や温泉から採取する日本発の技術もあわせて紹介する>

南鳥島沖でのレアアース(rare-earth elements:希土類元素)泥の試掘に向けて12日、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の地球深部探査船「ちきゅう」が清水港(静岡市)から出航しました。

試掘は内閣府の大型研究プロジェクト「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の一環として行われます。約6000メートルの海底からレアアース泥を連続的に引き上げる技術は、世界初で日本独自のものです。関係者は「2026年は国産レアアース元年になり得る」と期待を高めています。


レアアースは、私たちの生活の中ではスマホや電気自動車、LED照明などの製品に使われています。また、とくに強力な磁石に必須な元素として、医療機器のMRIや風力発電用の永久磁石に利用されています。

けれど、日本はレアアースの71.9%を中国からの輸入に頼っています(2024年、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構[JOGMEC]のデータより)。

高市早苗首相による昨年11月の台湾有事を巡る国会答弁以降、日中関係は緊張感を高め、中国による対日圧力が続いています。中国商務部は6日、日本へのデュアルユース(軍民両用)製品の輸出を禁止すると発表しました。

レアアースは自衛隊に配備されているF-35戦闘機などにも使われていることから、中国がレアアースを輸出管理の対象にするかどうかが懸念されています。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は8日、中国がレアアースやレアアース磁石の日本向け輸出を制限し始めたと報じました。レアアースの中国依存から脱却し調達先を多角化すること、とくに国産で安定供給を実現することは、日本の未来に直結する重要課題です。

日本は科学技術力で未来を切り開くことができるのでしょうか。「レアアースの国産化への転換点」となり得る試掘の内容を知り、他の重要希少金属に対する日本の新技術についても概観しましょう。

レアアースはレアメタルの1種

レアアースとは、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)とランタノイドと呼ばれる15元素を合わせた計17元素を指す呼称です。

似た言葉にレアメタル(rare metal:希少金属)があります。こちらは鉄や銅、アルミニウムなどの豊富な金属と金、銀を除いた希少な金属を指し、主に産業に利用されている31鉱種の総称です。レアアースもレアメタルのうちの1種として含まれています。

レアメタル

レアアース

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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