コラム

犬との生活が人の死亡リスクを抑制する...ほか、2024年に発表された動物にまつわる最新研究5選

2024年12月30日(月)17時45分

追跡調査を4年間行った結果、「伴侶動物なし」群に対する「伴侶動物あり」群の全死亡発生オッズ比(概ね「死亡リスクの倍率」のこと)は0.74で、伴侶動物との生活が死亡のリスクを抑制することが示されました。

なかでも、犬を飼育している人たちのオッズ比は、伴侶動物なし群に対して0.77であり、犬との生活によって死亡リスクが23%抑制されることが示されました。一方、猫、鳥、魚との生活では、オッズ比だけを見ると犬と同等、もしくはそれ以下の動物もありましたが、いずれも飼育と死亡のリスクとの間に意味のある関係性(有意差)は見られませんでした。

研究者たちは、伴侶動物の中で犬がとりわけ死亡リスクを抑制している理由について、「犬の世話を通じた運動習慣(身体活動量)の維持が、心血管疾患による死亡のリスクを抑制しているから」と解釈しています。犬以外の伴侶動物との生活では、運動習慣への影響が小さいことも考えられます。

今後は、伴侶動物との生活と健康アウトカム(健康状態の変化)との間にあるメカニズムを解明し、人と動物が共生できる社会の仕組みづくりにも寄与したいと言います。

ネコの「クサい尿」は健康の証拠?

岩手大学農学部応用生物化学科の宮崎雅雄教授らの研究チームは、「ネコの腎臓病が進行すると、尿のクサいにおいが低減する」ことを明らかにしました。研究成果は日本獣医学会の英文誌「The Journal of Veterinary Medical Science」電子版に12月3日付で掲載されました。

腎臓病は高齢ネコに多く見られる病気で、早期診断が治療や適切なケアのために非常に重要です。けれど、腎臓病の症状は徐々に進行するため、発見が遅れることは少なくありません。動物病院での尿検査や血液検査は腎臓病の診断に有効ですが、むやみに回数を増してもネコや飼い主の大きな負担になります。そのため、飼い主が日常生活でネコを観察して腎臓病を見つける手がかりになる指標が求められていました。

ネコ特有の「クサい尿臭」は、アミノ酸の一種である「フェリニン」が原因物質とされています。フェリニンは分解されると硫黄を含む揮発性物質が生成され、独特の臭気を放ちます。

本研究では、健康なネコ34匹と腎臓病を患ったネコ66匹を対象に、フェリニンの生成や排泄、尿臭の違いを比較しました。その結果、腎臓病が進行するにつれて、フェリニンの排泄量が顕著に減少することが分かりました。対して、フェリニンの前駆体であるトリペプチドは逆に増加し、病気の進行に伴い尿のにおいに関わる代謝経路が変化していることが示されました。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

日経平均は反発、ホルムズ海峡巡る過度な警戒感が後退

ワールド

仏韓、防衛協力強化・エネ安保で連携 首脳会談で合意

ビジネス

アングル:ネットフリックス、ワーナー買収失敗でオリ

ビジネス

午後3時のドルは159円後半でもみ合い、欧米休暇前
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イラン恐怖」の正体
  • 2
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 3
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受給年齢」
  • 4
    破産申請の理由の4割以上が「関税コスト」...トラン…
  • 5
    血圧やコレステロール値より重要?死亡リスクを予測…
  • 6
    満を持して行われたトランプの演説は「期待外れ」...…
  • 7
    日本の男女の賃金格差は世界でも突出して大きい
  • 8
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 9
    先進国が出生数の減少を嘆く必要はない? 「経済的…
  • 10
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 4
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 5
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 6
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 7
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 8
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 9
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 10
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story