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ミャンマーでエンタメとクリエイトする日々

新町智哉|ミャンマー

ミャンマー徴兵制の影響を一般人の視点から観てみる

日本へ行く友人を見送りに空港へ向かう道すがら:筆者撮影

おはようございます。
日中は37度超えで随分暑くなってきたヤンゴンから新町がお届けしております。
最近のミャンマーでは一番影響が大きかったであろうミャンマー国軍による徴兵制についてお伝えしておこうと思います。
非常にセンシティブな事ではありますので全てを吐露するのは難しいと考えています。
ですが、一般的な「徴兵制」という言葉だけではこちらのリアルは伝わらないと思っていますので出来るだけ感情を抜きに俯瞰した視点で伝えたいなと思っております。
ミャンマーの現状を深く知る方々には歯がゆい物言いに聞こえるとは思いますが、何分現地にいる身として、その辺りご了承いただけると幸いです。

本題の前に一つお知らせです。
『ミャンマー春の祭典を再び名古屋で!』ということで名古屋の有志の皆さんがイベントを行います。
前々回の記事で取り上げましたが
個人、法人を問わず寄付をお願いしています。
収益は全てミャンマー難民などの支援に使われます。
ご支援の程、よろしくお願い致します。
名古屋イベントロゴ.jpg


上記画像リンクからご支援いただけます。


今回取り上げるミャンマーでの徴兵制については私個人として大きな反省があります。
それはこの事態を矮小化して捉えてしまっていた事です。
曲がりなりにもミャンマーに住み10年経っている事で色々なミャンマーの事情を理解したつもりになっていたという事だと思います。
徴兵制が始まるという見出しの大きさに比べて実際への影響は少ないのではないか?
これは恐らく私だけでは無く現地に住む多くの日本人が思った事ではないかと思います。
残念ながらミャンマーに住んでいたとしても平和ボケというのにはなるのだなと痛感しています。

そもそも徴兵制とはどういうものか?
防衛省情報検索サービスによると
一般に、徴兵制度とは、国民をして兵役に服する義務を強制的に負わせる国民皆兵制度であって、軍隊を常設し、これに要する兵員を毎年徴集し、一定期間訓練して、新陳交代させ、戦時編制の要員として備えるものをいうと理解しています。
と出てきます。

私の理解も概ねこの通りだと思います。
日本人として世界のニュースの中で近く徴兵制が起こったところと言えばウクライナが出てくるのではないでしょうか?
しかし、ウクライナで起こった徴兵制とミャンマーで起こった徴兵制では前提とするものが大きく違います。

ウクライナが戦っているのはロシア、つまり外敵です。
ですが、ミャンマーでは国軍と国民が戦っています。
国軍が圧倒的に支持されていないのは我々が行った世論調査でみた限りは間違いのない事実です。
今一度、第1回ミャンマー世論調査を振り返り国民の意識を確認する
どんなに多く見積もっても1割にも満たない支持しか持たない国軍が自分たちと敵対している国民から徴兵するというとんでもない奇策を発しました。

対象者は人口5380万人中、1400万人以上となっています。
この数字は私が事態を矮小化して理解してしまった理由の一つだと思います。
これだけの割合であれば国民一人一人が混乱するという事はないのではないかと、非常に気楽に考えてしまっていましたが、よくよく考えるとこれはとんでもない理解不足でした。

これまでの国軍が行っていることを考えると自分がそこに強制的に入れられてしまう事は恐怖でしかありません。
まともな訓練も与えられず武器も無く前線に送られてしまう事が高い確率であるということは容易に想像できます。
少なくとも多くの対象者である若者はそう思います。
そこに思い至れなかったのは一緒に生活を共にする者として非常に愚かな事でした。

国軍は「徴兵制」という整った言葉を使って、さもしっかりと統制されたシステムがあるかのような発表をしたのにまんまとイメージ操作されてしまっていました。
これまで国軍が起こしてきたことを考えれば徴兵=死という考えに至ってしまう事は間違いありません。
軍は後追いで女性は当面徴兵から外す事、むやみやたらに国軍が一般人をさらっていくなどと言う事はないとわざわざ発表しました。

よくよく考えるとこれは実際にはそのような非人道的な事が行われているというのを隠しているに過ぎないという事は誰でも理解できることです。
地方の方がよりこの恐怖は強いようですが、ヤンゴンのような都心でも決して他人事ではありません。
実際、第2の都市マンダレーではパスポートを求める市民数千人が窓口に殺到、2人が圧死する痛ましい事故まで起きてしまいました。

しかもこの2名の方は代理だったそうです。
対象者本人が動くのが危険という判断だったのでしょう。
恐らく海外に出る為のあらゆるチャンネルは今、問い合わせや対応でパンクしている事だと思います。
混乱はなおも続いていくと予想されます。
このことがトドメとなって撤退する事業も数多くあるかと思います。

4月の水祭り明けに最初の徴兵が行われ5000人程が招集されるとあります。
その後毎月同程度、1年で5万人の徴兵が行われるとの発表ですが、実際の国民への被害はこの数字の非ではない程大きなものになります。
今年もまともな水祭りは行われないとは思っていますが、今特に対象者に入っている人やその家族は気が気ではない状態だと思います。
その日が近づくにつれ更に大きな混乱がくることは容易に想像できますが、それに対抗しようとする動きも大きくなると思います。

果たしてミャンマー国内でどんな事件が頻発していくのか、今現在その影響は私では計り知れません。

日中のヤンゴンの街を一目みただけではそのことはすぐには感じられません。
道路は渋滞し、往来には人がごった返す瞬間もあります。
経済も大きく動いているように見えるところは確実に存在しています。
しかし、例えば夜22時辺りになるとそんな街から人が消え去り静まります。
特に女性は早々に帰宅するように上の世代の人から注意されるようです。

国軍が「めったなことはない」と発表すればするほど国民側ではどんなことが起こってもおかしくないと正しく理解します。
歴史がそれを証明しているからです。
上の世代の方はそれを遠い歴史としてではなく実体験として経験しているからです。

一見平穏に見えるヤンゴンですが、毎日必ず不審な事件が起こっています。
中々表に出てはきませんが、軍政府発表では無く、独立系メディアでは連日そのようすが報道されています。
これまで何度か節目節目で何か大きな事件が起こるのではないかと私もお伝えしてきましたが、国軍に徴兵されるという恐怖は今対象者の国民にとって非常に大きなものであると今は確信しています。

それに対抗するためには手段を選んでいられないという流れはどう止められるのでしょうか?
引き続き注意しながらみていかないといけないと感じています。
日本の皆さんも注意深くミャンマーの情勢をみていたいただければ幸いです。

それでは、また。

 

Profile

著者プロフィール
新町智哉

映像プロデューサー。2014年からミャンマー最大都市ヤンゴンに在住。MAKE SENSE ENTERTAINMENT Co.,Ltd. GM。日緬製作スタッフによる短編コメディ「一杯のモヒンガー」でミャンマーワッタン映画祭のノミネートを皮切りに世界各国の映画祭で受賞。起業家、歌手、俳優としてもミャンマーで活動する。

Twitter:@tomoyangon
Instagram:tomoyangon
note:https://note.com/tomoyaan

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