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ドバイ像の砂上点描

Mona|UAE

中東限定の「旬の味」生デーツを知っていますか?

■生デーツをご存知ですか?

近年日本でも徐々に知名度が高まりつつある「デーツ」。ナツメヤシの実のことだ。

小皿にちょこんと盛られた茶色くて小さなドライフルーツを、海外旅行中に食べた経験があるという方、また中東のおみやげとして受け取ったことがあるという方も多いだろう。オタフクソースの甘味成分として使われていることでも有名だ。

では「生デーツ」はいかがだろうか。

本日は、今が旬の貴重な生デーツ「ロタッブ」についてご紹介したい。

Dates1.jpg(Photo by Mona)

■ナツメヤシの実、デーツとは

そもそもデーツとは何か。多くの日本人は「ヤシの木」と聞くと、まず「ココヤシ」を思い浮かべるだろう。ココナッツがなる、ハワイっぽい、アレだ。それに対しナツメヤシは、同じヤシ科に属している別の植物である。こちらにはココナッツではなくデーツが実る。

BateelBox.jpg(Photo by Mona)

乾燥に強いナツメヤシは砂漠地帯でもよく育ち、紀元前から中東地域で幅広く愛されてきた。乾燥させたデーツは保存が効くので、砂漠をわたる遊牧民やキャラバンの携行食として活躍。コーランにも登場しており、イスラム教の宗教行事には欠かせない。ラマダン月に、日没直後いちばん最初に口にするのはデーツだ。家庭で来客をもてなす際に出てくるのもデーツ。現代では、「Bateel」をはじめとした贈答用高級デーツブランドもよく知られた存在だ。あまり宗教や文化に詳しくない一般の旅行者にも、「そういえばホテルにチェックインしたらテーブルに置いてあった」などの体験が寄り添う。

デーツは単なるフルーツではなく、この地域の歴史や信仰、文化を担う特別な存在なのだ。

■デーツはどう実るの?

さて、そんなデーツの一年を見ていこう。ドバイの短い冬の終わり、ナツメヤシの枝葉の付け根に、デーツの粒の「ふさ」が現れる。この時点では、デーツの粒たちはまだ黄色く小さい。この粒たちが、夏に向けてぐんぐん育っていく。なにげない道端で、公園で、その粒と房の成長を眺めては、夏の足音を感じるものだ。

夏が盛りに至る頃には、一粒一粒の大きさはミニトマト〜大きめの梅干しくらい、房の大きさは大人が両手で抱えるくらいになっている。このくらいになると、網をかける。粒が落ちて地面が汚くなるのを防ぐためと、鳥に食べられるのを防ぐためだ。中には敢えて1本だけ網をかけず「鳥さん、食べるならここから食べてね」とする生産者もいるそうだ。

Dates3.jpg

(Photo by Mona)

よく育ち、ずっしり重くなった房。これをそのまま放っておくと、なんと木にぶら下がったまま乾燥が始まる。実ったまま、自然のドライフルーツ加工が始まるのだ。

しっかり乾燥させると、茶色くなり、シワシワになり、甘みが凝縮された栄養満点のドライフルーツになる。見慣れたデーツの姿はこれ。

それを敢えて乾燥が進む前に、生の果実としてプリっとした状態の時点で収穫したものが、生デーツ「ロタッブ」だ。

■生デーツ「ロタッブ」は夏限定の旬の味

Dates Shop1.JPGのサムネイル画像(Photo by Mona)

ロタッブを初めて見た日本人は、それが乾燥前のデーツの姿であることに気がつかないかもしれない。黄色くて、プリっとしていて、ときどき熟していて。粒を齧ると、ジューシーでシャキシャキした部分と、熟してトロっとした部分がある。(そして時々シブいやつがいる。)味は乾燥デーツと違い、フルーティーで爽やかだ。

生デーツは傷みやすく、流通に向かない。そのため、この時期のこの地域でしか味わうことができない。シーズン限定、エリア限定のお楽しみなのだ。

この楽しみ方は日本の柿を彷彿とさせる。生の果物として食べるときは、シャキシャキしている個体や少々トロっとした個体がある。(そして時々シブいやつがいる。)乾燥させると、ねっとりとした濃厚な甘味を帯び、長期保存や流通に適す、と共通項が多い気がする。

■ロタッブはどこで食べられるの?

そんな旬のフルーツ、ロタッブは、7月〜8月あたりにドバイの店頭に並ぶ。お探しの際は、ドライフルーツとしてのデーツ売り場ではなく、生の果物の売り場に行こう。時期にさえなれば、大手スーパー「Carrefour」や「Union Coop」の果物売り場にも並んでいる。

前述の通り傷みやすいため、日本への輸出はほぼないと言っていいだろう。

Dates Shop2.jpgのサムネイル画像(Photo by Mona)

こちらはアブダビのデーツマーケット。多種多様な乾燥デーツ、季節によってはもちろんロタッブも、山盛りで量り売りされている。

ここはアブダビのガレリアモールから3kmくらいの場所だ。CHANELやHERMESからわずか3kmで、これほどまでに風景が変わるのは、この国の面白いところだとつくづく思う。

■自家製デーツのお裾分け

FreshDates.JPG

(Photo by Mona)

私は、夏になると毎年、親しいUAE人一家の畑で採れた「ロタッブ」のお裾分けをいただく。日本の田舎では採れすぎたキュウリやナスを近所に配るのと同じように、ナツメヤシ畑を持っているUAE人はデーツをくれる。それが実に美味しい。

奥ゆかしい(はずの)日本人としては、自ら「くださいな」と言うのは憚られるのだが、夏が来るたび「ロタッブ食べる?」というメッセージが送られてくるのを心待ちにしている私がいる。

私からはお礼として日本のちょっと良い緑茶をお渡しした。いくら相手が桁違いに裕福でも、貰いっぱなしはいけない。

■夏の特別を楽しんで

BarshaPark.JPG(Photo by Mona)

在住日本人からは「ドバイでは季節の移ろいを感じることがない」との嘆きをよく聞くが、目を向ければ、この地の植物は巡る季節に合わせてすくすく一年の成長を見せている。来年からは、ほんの少し目線を上に向けて、デーツの小粒たちの成長を見守ってみてはいかがだろうか。

この灼熱の季節にドバイにいる人だけが楽しめる、特別なフルーツ、生デーツ。その美味しさを知ったら、ドバイに夏が来るのがちょっぴり楽しみになるかもしれない。

 

Profile

著者プロフィール
Mona

アラブ首長国連邦ドバイ在住。東京外国語大学卒。日系ベンチャー、日系総合商社、湾岸系資本の現地商社等での勤務経験を元に、雑誌・ラジオ・Web媒体でドバイ現地情報や中東ビジネス小話を発信中。「地に足のついた」ドバイ像をお届けする。ドバイ在住11年目。ペルシア語使い。

ブログ「どうもヒールが砂漠に刺さる」

Twitter:@Monataro_DXB

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