最新記事
MLB

ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた

BEHIND THE GLORY

2025年11月8日(土)19時15分
青池奈津子(ロサンゼルス在住MLBライター)

「縁の下の力持ち」が活躍した

そんなミギーが打ったからこそ、あの一発はチームの起爆剤になった。しかも相手は苦手な右投手。「まだ終わっていない」と、ミギーが行動で示した渾身のメッセージだった。

後になって分かったことだが、第6戦のファインプレー後にキケの祝福のハグで以前からの左脇腹の痛みが悪化。第7戦では痛み止めを打ちながら出場し、あの同点弾を打った際も脇腹に激痛が走っていたという。

今年のドジャースのポストシーズンは、そんな「縁の下の力持ち」たちが刻む伝説的な瞬間の連続だった。ブルペンが次々と崩れるなか、ポストシーズン前半で佐々木がクローザーとして躍動したことはチームに希望を与えた。

クレイトン・カーショウを有終の美で送り出したいという思いもチームを一つにし、延長18回まで続いた第3戦でカーショウが12回に救援登板し抑えた姿は、多くの人の胸を打った。

優勝決定戦でアンディ・パヘスがキケに「ダンク」してまでつかんだフライキャッチも、これから何年も語り継がれるだろう。

11月3日、優勝パレード後のフィールド。少し酔ったアンソニー・バンダは、「みんなで『51』を着けて戦えたことを誇りに思う」と、WS直前にチームを離脱したアレックス・ベシアを思い胸に手を当てた。

ベシアは生まれたばかりの待望の第1子が亡くなってしまっていたことを11月7日に公表したが、舞台が大きくなるほど集中し、きっちり結果を残した彼の存在があってこその2連覇だ。

いつもなら、最有力候補が優勝する展開にはどこか抵抗を覚えるが、今回ドジャースが改めて教えてくれたのは、どれだけスターがそろっても「野球は本当に難しい」ということ。

彼らの真の強さは、潤沢な資金力でも、スター選手の名簿でもない。最後の最後まで戦い抜く集中力と精神力、そして互いを信じ合い、支え合う力にほかならない。

ニューズウィーク日本版 ISSUES 2026
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月30日/2026年1月6号(12月23日発売)は「ISSUES 2026」特集。トランプの黄昏/中国AIに限界/米なきアジア安全保障/核使用の現実味/米ドルの賞味期限/WHO’S NEXT…2026年の世界を読む恒例の人気特集です

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ベネズエラ麻薬積載拠点を攻撃と表明 初

ワールド

韓国電池材料L&F、テスラとの契約額大幅引き下げ 

ワールド

ビングループのEVタクシー部門が海外上場計画、企業

ワールド

中国軍が台湾周辺で実弾射撃訓練、封鎖想定 演習2日
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 5
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 6
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 7
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 8
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中