最新記事
教養

「値下げ競争」が世界を守った?...米ソの冷戦が核戦争にならなかった理由は「数学で」説明できる

2025年7月9日(水)16時41分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
自由の女神像と核爆発のイメージ

geralt-Pixabay

<なぜ核戦争は起きなかったのか。冷戦時代、武力衝突がないかわりに核開発が進んだ理由は、「競合店同士の価格競争」が起きていたから>

アメリカとソ連がにらみ合っていた冷戦時代、第三次世界大戦がいつ起きてもおかしくないと言われながら、人類は半世紀を乗り切った。

数学史ライターのFukusuke氏は、その理由を米ソ両国の間に「ナッシュ均衡」が起きていたからだと説明する。Fukusuke氏が上梓した『教養としての数学史』(かんき出版)より、「なぜ核戦争は起きなかったのか」を数学的に解説する。

※第1回はこちら:適切な保険料はいくら?...「86歳で死ぬ」想定、世界初の「科学的な」保険システムを作った「ある計算式」とは?
※第2回はこちら:ナイチンゲールの真の功労は「数学」ができたこと?...イギリス政府を動かした画期的な「プレゼン方法」とは?

◇ ◇ ◇

世界を救った「ナッシュ均衡」は「値下げ競争」

1945年8月、アメリカが広島と長崎に落とした原子爆弾によって核兵器の圧倒的な力が世界中に示され、この時点で核兵器を独占していたアメリカは国際的に大きな影響力を誇示していた。

元々は同じ連合国側として第二次世界大戦を戦ったアメリカとソビエト連邦(ソ連)。しかし、資本主義を掲げるアメリカと社会主義を掲げるソ連の間に軋轢が生じる。その間、ソ連は秘密裏に核開発を行っており、1949年に核実験を成功させたことでアメリカ一強の構図が崩れた。

一時は核兵器による第三次世界大戦が始まることも危ぶまれたが、そうならなかった。約半世紀もの間、世界は緊張状態にはあったものの、2つの大国が熱を帯びない冷戦の状態が続いたのだ。この背景には、ゲーム理論における「ナッシュ均衡」という考え方があった。

ナッシュ均衡とは何か。

対談
為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 セカンドキャリアの前に「考えるべき」こととは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アングル:リスクは成長かインフレか、FRBのジレン

ビジネス

住友商事、英クリーンエネ事業に100億ドル投資 英

ビジネス

米エヌビディア、時価総額4兆ドルに 世界初

ワールド

ブラジルに50%関税、トランプ氏がルラ大統領に書簡
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 5
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 6
    人種から体型、言語まで...実は『ハリー・ポッター』…
  • 7
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 8
    【クイズ】 現存する「世界最古の教育機関」はどれ?
  • 9
    昼寝中のはずが...モニターが映し出した赤ちゃんの「…
  • 10
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 7
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 8
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中