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教員の病気離職者が、21世紀に入って右肩上がりに急増している

2025年6月25日(水)11時40分
舞田敏彦(教育社会学者)

上記の病気離職率を年齢層別に計算すると、教員のどの層で危機状況が強まっているかが分かる。<図2>は、公立小学校教員の年齢層別の病気離職率だ。2000年度と2021年度を比較できるようにしている。

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病気離職率はどの層でも増加しているが、その幅は若年層で大きい。20代の若手では、この20年ほどで10倍以上に高まっている。以前は、体力が衰える高齢になるほど病気離職率が高かったが、最近では若手が突出して高くなっている。

今は学校現場も余裕がなくなり、先輩教員が若手を手取り足取りサポートするのが難しい。早いうちから重責を担わされることも増えている。これに関して、2024年6月の中央教育審議会答申では、「若手教師を支える体制を構築するため、若手教師と年齢が近い中堅教師や経験豊富なベテラン教師に気軽に相談できるようにするとともに、そのような体制の整備に向けて、若手教師の支援について学校の中で組織的に充実を図っていく」と言及されている。教諭と主幹教諭の間に設けられた主務教諭は、若手からの相談を受ける役割を期待される。

だが組織の在り方を変えても、業務量そのものを減らさないことには、問題の根本的な解決は望めない。教員が、あたかも「何でも屋」のように扱われている状況を変えることだ。ICT業務や、多様な背景の児童生徒への対応などを担う人材を、学校にどんどん入れていく必要がある。年々高まる学校への要請を、教員だけで受け止めるのは不可能というものだ。

<資料>
文科省『学校教員統計』

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