日本政府こそが責任感を持つべき...「産業化」した東南アジア特殊詐欺を「根絶」できない理由

VICTIMS AND PERPETRATORS

2025年4月25日(金)17時10分
イバン・フランチェスキーニ(豪メルボルン大学講師)、リン・リー(ベネチア・カフォスカリ大学博士号候補生)、マーク・ボー(リサーチャー、東南アジア在住)

2月初め、東南アジアの詐欺業界は大いに揺れた。タイ当局が、国境を接するミャンマーのミャワディへの電力供給を断つと発表したからだ。

ミャワディは近年、東南アジアの詐欺業界の中心地の1つとして頭角を現した。だが今年1月、中国人俳優が誘拐されてこの地の詐欺拠点に連れてこられ、その後救出されるという事件が起きて大きな話題になった。これによりタイ当局は、これまでにない強い対応を余儀なくされたのだ。

2カ月もしない間に、数十カ国から来た6000人を超える人々が詐欺の拠点から救出され、送還のためにタイに移送された。

詐欺の拠点の摘発はこれ以前にも、23年にはミャンマー北部、24年にはラオスのゴールデントライアングル経済特区で行われていた。だが摘発強化は一時的な動きに終わってしまいがちだ。

それに詐欺集団はフットワークがいい。東南アジア各地で人を替え手段を替えて詐欺を行っている組織の話は、これまで数え切れないほど耳にした。

カンボジア当局は22年後半にシアヌークビルで詐欺拠点の摘発を行ったが、多くの詐欺集団はラオスやミャンマー、カンボジア国内のもっと辺ぴな場所に移動したという。

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