日本政府こそが責任感を持つべき...「産業化」した東南アジア特殊詐欺を「根絶」できない理由
VICTIMS AND PERPETRATORS
この摘発はカンボジア政府に言わせれば大成功だったが、詐欺集団の活動を抑え込むことにはならなかった。
私たちのうちの1人は当時シアヌークビルにいて、大規模な詐欺拠点から何十人もの人々が出て行くのを目撃した。彼らは荷物を手に粛々とバスに乗り込み、バスは2台のSUVに守られながら車列を組んで出発した。取り締まりについて前もって知らされていたのは明らかだった。
地元の大物とずぶずぶの関係
ミャンマーの北部と東部にある詐欺拠点については、地元警察と中国とタイが協力して摘発を進めようとしている。そのあおりでカンボジアにおける詐欺集団の活動が再び活発化するとの見方もあるが、そもそも前回の摘発で詐欺集団はカンボジアからいなくなったのだろうか。
ミャンマーで摘発が相次ぐ前から、カンボジアの農村地帯では大型の新しい拠点がつくられていた。ホテルが詐欺拠点につくり替えられたとか、以前からあった拠点が規模を拡大したといった話も伝えられている。
長期的かつ根本的な対策を取らず、たまに取り締まったところで詐欺の根絶にはつながらないのだ。カンボジアやミャンマーやラオスといった国々は、当局の腐敗、警察力の弱さ、国境を越えた移動が容易という条件がそろい、詐欺集団にとっては理想的な環境だ。
さらに、詐欺集団は地元の有力者の庇護下にある。ミャンマーでは軍事政権と手を組んだ民兵組織が、カンボジアでは与党に近い大物たちが詐欺師を守っている。