最新記事
注目ニュースを動画で解説

「来ないでほしい」がエジプトの本音...ガザ避難民流入をなんとしても避けたい理由【アニメで解説】

2023年11月2日(木)14時25分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
エジプトのシシ大統領

Newsweek Japan-YouTube

<エジプトがシナイ半島へのガザ避難民の流入を避けたがるのはなぜか? その理由を解説したアニメーション動画の内容を一部紹介>

イスラエルとアメリカがガザからの避難民を受け入れるよう圧力をかけても、エジプトは抵抗し続けてきた。アブデル・ファタハ・アル・シシ大統領は「パレスチナの大義は全てのアラブ人の大義」と言うが、それでも受け入れられない裏には切実な理由がある。

本記事では、本誌YouTubeチャンネルの動画「「来ないでほしい」がエジプトの本音...ガザ避難民の流入をどうしても避けたい理由【アニメで解説】」の内容をダイジェスト的に紹介する。

 
◇ ◇ ◇

シシ大統領は先月18日、ガザ住民のシナイ半島への強制移送は許容できないと明言した。

というのも、シナイ半島には以前からイスラム過激派の諸勢力が潜んでおり、エジプトは反乱の鎮圧に手を焼いてきたからだ。もしも避難民にハマスの残党が紛れ込んでいてシナイ半島からイスラエルを攻撃するか、あるいは攻撃計画を練るだけでも、イスラエルはそれを口実にエジプト領土で軍事作戦を展開する危険性がある。

nwyt1102_2.jpg

過去には、シナイ半島にパレスチナ国家をつくる構想が外部から持ちかけられたこともある。

「アラブの春」で失脚したホスニ・ムバラク大統領は1983年にマーガレット・サッチャー英首相(当時)と密約を交わし、レバノンにいるパレスチナ難民のシナイ半島移住を認めたとメディアが伝えた。しかし、本人は生前この報道を否定。さらに2010年にもイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相からシナイ半島にパレスチナ国家をつくる構想を提案されたが、これも拒否したと主張している。

nwyt1102_5.jpg

イスラエル駐在のエジプト大使アミラ・オロンは先月11日、イスラエル軍の作戦のためにシナイ半島を避難区域にすることは許さないとの意思をX上で示した。

もしもガザ住民を受け入れれば、「一時的な避難」では済まず、恒久的な住みかとなる可能性もある。実際、過去のイスラエルとの紛争で近隣諸国に逃れたパレスチナ人の多くは、その後故郷に帰ることができなかった。

nwyt1102_7.jpg

「エジプトに来ないでほしい」というのは、エジプトの宗教組織や多くの国民の本音でもある。

それでも最近、北シナイ県の知事が受け入れ準備を呼び掛けるなどして一定数の避難民を受け入れる動きを見せている。ただし、ガザ住民用の避難所は強制収容所並みに移動の自由が制限されるとの見方もある。

この地で10年以上も過激派組織「イスラム国」(IS)系列の武装勢力と戦ってきたエジプト軍は、過激分子の侵入を極度に警戒しているとアナリストらは指摘する。

nwyt1102_10.jpg

エジプトは既にスーダンから難民30万人を受け入れている。これ以上難民が流入すれば、治安上のリスクだけでなく、国家財政がパンクしかねない。

12月に大統領選を控えるシシにとって、難民の大量流入はなんとしても阻止したい一線なのだ。

nwyt1102_11.jpg

■詳しくは動画をご覧ください。

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米フォード、スペイン工場で最大1600人の追加削減

ワールド

香港中銀、政策金利を据え置き 米FRBに追随

ビジネス

米運輸当局、ウェイモの無人タクシー調査で追加情報を

ビジネス

テスラ株主、560億ドル報酬案を承認へ マスクCE
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:姿なき侵略者 中国
特集:姿なき侵略者 中国
2024年6月18日号(6/11発売)

アメリカの「裏庭」カリブ海のリゾート地やニューヨークで影響力工作を拡大する中国の深謀遠慮

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 2

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「勝手にやせていく体」をつくる方法

  • 3

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 4

    長距離ドローンがロシア奥深くに「退避」していたSU-…

  • 5

    謎のステルス増税「森林税」がやっぱり道理に合わな…

  • 6

    【衛星画像】北朝鮮が非武装地帯沿いの森林を切り開…

  • 7

    バイデン放蕩息子の「ウクライナ」「麻薬」「脱税」…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が妊娠発表後、初めて公の場…

  • 9

    たった1日10分の筋トレが人生を変える...大人になっ…

  • 10

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 1

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 2

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...? 史上最強の抗酸化物質を多く含むあの魚

  • 3

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 4

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 5

    カラスは「数を声に出して数えられる」ことが明らか…

  • 6

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 7

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 8

    「クマvsワニ」を川で激撮...衝撃の対決シーンも一瞬…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が妊娠発表後、初めて公の場…

  • 10

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 10

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中