最新記事

核・ミサイル開発

北朝鮮「軍事偵察衛星」打ち上げ再び失敗、次回10月計画と発表 日米韓が外相会談へ

2023年8月24日(木)12時00分
北朝鮮の新型ロケット「千里馬1型」

写真は5月31日に打ち上げが失敗に終わった新型ロケット「千里馬1型」 KCNA KCNA - REUTERS

日米韓3カ国が自制を求める中、北朝鮮は24日、軍事偵察衛星を打ち上げたと発表した。ロケットの3段目にシステムトラブルが起き、5月に続き失敗した。ただ、重大な問題ではないとし、10月の再打ち上げ計画を表明した。日米韓は、外相電話会談の開催を調整している。

日本政府は打ち上げに関して、地球周回軌道への衛星の投入は確認されておらず、失敗したとみられる、との見解を示した。韓国軍も同様の見方をしている。

日米韓は高官による電話協議を行い、同発射を強く非難した上で、先の日米韓首脳会合の成果も踏まえつつ引き続き日米、日韓、日米韓で緊密に連携することを再確認した。

岸田文雄首相は官邸で記者団の取材に対し、「引き続き情報収集や警戒監視に努めていかなければならない。先日の日米韓首脳会合を受けて、日米韓でこれまで以上に緊密に連携していく」と語った。

松野博一官房長官は臨時会見で、北朝鮮が弾道ミサイル技術を使用して発射した1発は複数に分離し、一部は沖縄本島と宮古島の間の上空を通過して黄海、東シナ海、太平洋の日本の排他的経済水域(EEZ)の外に落下したと明らかにした。破壊措置は行わなかったという。現時点で被害の情報は確認されていない。

日本政府は午前3時54分、北朝鮮からミサイルが発射されたとみられるとして全国瞬時警報システム(Jアラート)を発出した。対象は沖縄県で、県の住民に避難を呼び掛けた。その後、ミサイルは太平洋へ通過したとみられ、日本周辺への影響はなくなったとして解除した。

韓国軍は、北朝鮮が北西部沿岸地域の東倉里付近から「宇宙発射体」を打ち上げたと発表した。

松野官房長官は弾道ミサイルの技術を使用した発射は日本だけでなく地域への脅威だとした上で「最も強い表現で非難する」と述べた。

北朝鮮は24─31日の期間、「人工衛星」を打ち上げると日本政府に通告していた。北朝鮮が設定した危険区域は、黄海上の2カ所とフィリピン東側の1カ所。日本はロケットの残骸などが自国のEEZ外に落下する可能性があるとしていた。

弾道ミサイル技術を使った北朝鮮による飛翔体の発射は国連安保理決議違反だとし、日本や米国などは自制を要請。日本は領域に落下する場合に備え、5月末からイージス艦などによる迎撃態勢を維持してきた。

北朝鮮が5月末に発射した「偵察衛星」は、ロケットのエンジンに問題があったとして失敗。早期に再び打ち上げると表明していた。今回は日米韓3カ国首脳が対北朝鮮で連携を強めることで合意した直後かつ、米韓が合同軍事演習を実施する最中に発射した。

韓国軍は合同軍事演習は継続すると明らかにした。

北朝鮮は米軍などの動きを監視する軍事偵察衛星の打ち上げに意欲を示しているが、5月末に発射失敗した衛星の残骸を回収した韓国軍は偵察衛星としての能力はないと分析していた。


[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2023トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

原油先物、週間で2%超安 堅調な米経済指標受け

ワールド

米大統領選でトランプ氏支持、ブラックストーンCEO

ビジネス

米国株式市場=反発、ナスダック最高値 経済指標が追

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、利益確定で 経済指標堅調で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目の前だ

  • 2

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」...ウクライナのドローンが突っ込む瞬間とみられる劇的映像

  • 3

    批判浴びる「女子バスケ界の新星」を激励...ケイトリン・クラークを自身と重ねるレブロン「自分もその道を歩いた」

  • 4

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 5

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 6

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 7

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 8

    テストステロン値が低いと早死にするリスクが高まる─…

  • 9

    日本を苦しめる「デジタル赤字」...問題解決のために…

  • 10

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 4

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 7

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 8

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 9

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 10

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中