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世界のニュース50

日本発の「外来種」に世界が頭を抱えている

2023年5月4日(木)08時15分
茜 灯里(作家・科学ジャーナリスト)

日本では食用などに重宝されているクズだが IGAGURI_1/ISTOCK

<味噌汁に欠かせないあの食材も「世界の侵略的外来種ワースト100」に指定されている>

近年、ブラックバスやマングースなど日本の生態系を脅かす外来生物が大きな問題となっている。しかし日本原産の生物の中にも、海外で環境を破壊しているものがある。

例えば国際自然保護連合(IUCN)が選ぶ「世界の侵略的外来種ワースト100」にはクズとワカメが入っている。日本で古くからくず粉や葛根湯に利用されているクズは繁茂力が非常に高い多年草で、絡み付く相手を探しながらつるを長く伸ばし、茎の節から根を出して地面に太い根を張り巡らす。切っても切っても生えてきて他の植物や建造物を覆い尽くすので、駆除が難しい。

アメリカには1876年のフィラデルフィア万国博覧会の際に日本から持ち込まれ、かつては飼料用や観賞用としてもてはやされた。しかし現在では米南東部の土地300万ヘクタールを覆い、林業の生産性も落とす有害な雑草とされている。1ヘクタール当たり500ドルの駆除費用がかかるため「グリーンモンスター」と呼ばれる。

ワカメは東アジアに自然分布するが、1980年代以降、「ワカメの子供(遊走子や配偶体)」が種カキや船体に付着したり、船のバラスト水(重り)に混入したりして世界各地に拡散した。日本と朝鮮半島では食用にするが他の地域ではほとんど食べないため大繁殖し、自生種や養殖漁業に悪影響を与える害藻として扱われている。

weboriginak20210521baeki-profile2.jpg[筆者]
茜 灯里(作家・科学ジャーナリスト)
東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専攻卒業。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。博士(理学)、獣医師。朝日新聞記者、国際馬術連盟登録獣医師などを経て、現在、立命館大学教員。サイエンス・ライティング講座などを受け持つ。文部科学省COI構造化チーム若手・共創支援グループリーダー。第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。デビュー作『馬疫』(光文社)を2021年2月に上梓。

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世界のニュース50

EV世界一の中国で、時速60キロを出す「自転車」が走り回っている理由

2023年5月2日(火)20時30分
高口康太(ジャーナリスト)
電動自転車

北京で電動自転車を運転(もちろんノーヘル) JASON LEEーREUTERS

<電動自転車の年間販売台数はなんと約4000万台。しかも、日本の電動アシスト付き自転車とはまったく違う代物だ>

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中国

【動画】中国で多発している電動自転車による事故(閲覧注意)

2023年5月2日(火)18時30分
電動自転車

TonyV3112-shutterstock

<「不正改造」電動自転車のブレーキ能力はあくまで自転車並み。事故が多発し、警察は取り締まりを強化しているが......>

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5類引き下げ前におさらいする、新型コロナのこれまでとこれから

2023年5月2日(火)15時10分
東京

マスクを着用しない人の姿も珍しくなくなった(写真は3月20日、東京) Androniki Christodoulou-REUTERS

<5月8日から感染法上の分類が季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げられる新型コロナウイルス。流行が始まって3年が経過した今、3つのトピックス──最新の感染状況、ウイルスの起源、ワクチン接種と副反応──でこれまでとこれからについて解説する>

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世界のニュース50

「もうとどまるのは嫌だ」オレゴンとアイダホで州境紛争勃発...その驚きの原因

2023年5月2日(火)11時00分
冷泉彰彦(在米作家、ジャーナリスト)
アイダホ州とオレゴン州

アイダホ州とオレゴン州 Alexander Lukatskiy-Shutterstock

<陸部の住民の多くがアイダホ州への帰属を希望>

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環境

米環境団体がスペースXのロケット打ち上げ認可取り消し求め訴訟「国立野生動物保護区の環境が悪化」

2023年5月2日(火)10時55分
プラカードをもってスペースXのロケット打ち上げに反対する人々

複数の環境団体が5月1日、実業家イーロン・マスク氏が率いる宇宙開発企業スペースXのロケット打ち上げ事業は近隣の国立野生動物保護区に悪影響を及ぼすとして、米連邦航空局(FAA)に事業認可取り消しを求める訴訟を起こした。写真は反対派の抗議活動のようす Democracy Now! / YouTube

実業家イーロン・マスク氏が率いる宇宙開発企業スペースXのロケット打ち上げ事業は近隣の国立野生動物保護区に悪影響を及ぼすので、米連邦航空局(FAA)は事業認可を取り消せ――。複数の環境団体が1日、こうした訴訟を起こした。

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