最新記事

教育

5年で創造的な技術者を育成、日本の「KOSEN(高専)」に世界が注目

2023年1月18日(水)11時30分
※TOKYO UPDATESより転載
仙台高等専門学校

一人ひとりの個性を生かす少人数教育。全国に国公私立合わせて57校あり、約6万人が学んでいる(2022年8月時点) 写真提供:仙台高等専門学校

<「高等専門学校(以下、高専)」が誕生してから60年を迎えた今、海外で「KOSEN」と呼ばれ、その教育システムに関心が集まっている。世界に類を見ない日本独自の「高専教育」とは>

高度な専門性をもつ人材を育む一貫教育

2022年4月、高専生たちがディープラーニング(深層学習)を活用した作品を制作し、その事業性を企業評価額で競う「第3回全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト2022(DCON2022)」の本選が行われ、過去最高10億円の企業評価額が3チームにつけられた。

高専生の柔軟な発想力とモノづくりの高い技術力は高専独特の教育システムによって培われている。高専は社会が必要とする、創造性をもったエンジニアを養成する高等教育機関で、学科(専門分野)は機械系、材料系、電気・電子系、情報系、化学系、生物系、建築系といった工学系や商船系のほか、経済・ビジネス系などの社会ニーズに対応したものなど多岐にわたる。

中学校卒業後の15歳で入学し、5年一貫の教育を通じて大学と同程度の専門的な知識と技術を修得できる。国立高等専門学校機構(東京都)の理事長を務める谷口功氏は「15歳から5年間の一貫教育には大きな意味があります。『やりたいこと』が明確に決まっている学生にとっては、大学受験に時間を割くことなく好きなモノづくりに没頭できます」と言う。

tokyoeye230118_2.jpg

DCON2022では、全41チームのうち予選を勝ち抜いた10チームが本選に出場した。写真提供:全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト

授業は実験・実習に重点を置いている。実際にモノづくりをすることで、創造力、問題解決能力、忍耐力などが養われるという。前述のDCONのほかにも、「アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト(高専ロボコン)」や「全国高等専門学校デザインコンペティション(高専デザコン)」など、アイデアを形にして発表できる機会が多いのも高専の特徴だ。身に付けた知識や得られた研究成果を社会問題解決のために応用する「社会実装教育」にも注力している。

高専の卒業生はIT業界をはじめ、さまざまな分野で活躍している。「ポケモン」の生みの親として知られる、株式会社ゲームフリークの代表取締役の田尻智氏、東京工業大学学長の益一哉氏らも高専出身だ。

tokyoeye230118_3.jpg

東京工業高専と北九州工業高専の2校は高専のロボット分野の拠点校となっている。実習で設計・製作したロボットの走行テストなどを行う。写真提供:東京工業高等専門学校

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

マスク氏とフアン氏、米サウジ投資フォーラムでAI討

ビジネス

米の株式併合件数、25年に過去最高を更新

ワールド

EU、重要鉱物の備蓄を計画 米中緊張巡り =FT

ワールド

ロシアの無人機がハルキウ攻撃、32人負傷 ウクライ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 10
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中