最新記事

ドイツ

「冬が越せない......」、真冬でも暖房温度19度まで、原発議論も再燃するドイツ

2022年9月5日(月)18時32分
モーゲンスタン陽子

ガス価格高騰をうけ、ドイツでは各種の規制がはじまった...... REUTERS/Lisi Niesner

<ドイツではガス価格高騰で、対策として各種の規制が導入されている。いっぽう原発議論も再燃している。>

欧州各国での異常なまでのガス価格高騰が連日報道されている。ロイターによると、欧州ガス価格の指標となるオランダTTFは過去12カ月で550%上昇。イギリスでは10月から家庭の電気・ガス料金が80%引き上げられる。EU加盟国の中で最も痛手を被っているのはイタリアとドイツの家庭であるという。

ドイツ家庭の7月のエネルギー費用は昨年に比べ2倍以上に膨らんだ。オラフ・ショルツ首相は1日、対策は十分であり、ロシアのガス供給が停止してもなんとか冬を越せるだろうと述べたが、市民の不安はなかなか消えない。

真冬でも暖房は19度まで

来る冬に備え、ドイツでも9月から新たな対策が導入された。例えば、今週から向こう6ヶ月、公共施設の暖房は最高19度までになる。まだまだ残暑の続く9月は問題ないだろうが、真冬には厳しい温度設定だ。これまではオフィスの奨励「最低」気温が20度だった。さらに、ホールなどの広い空間や技術室の暖房は極力避けるよう求められる。

小売店のショーウィンドウは夜10時から翌朝6時まで消灯される。日中もドアを閉めなければならなくなるため、小売業界団体は早速「ドアは閉まっていますが営業中です」と書かれたポスターを用意し、小売店が利用できるようにした(これまでは営業中の店はドアを開けたままにしているところが多かった)。

モニュメントなどのライトアップ中止も検討されている。地下道の電気広告などは夜間も点灯されるようだが、それでも街中が暗くなることによる治安の悪化を懸念する声も上がっている。個人に適応される新規則もある。例えば、温水プールなどの禁止だ。またドイツでは賃貸契約に光熱費が含まれる場合もあり、家主には契約の見直しの必要も出てくる。

ドイツでは今年6月から9月の3ヶ月間、全国どこでもローカル線なら1ヶ月9ユーロで乗り放題というチケットが売り出された。ガソリン代の高騰を受け、市民が公共の交通機関を利用しやすくするための試みだった。3ヶ月で5千2万枚の売り上げがあり、市民からは継続を希望する声も上がっている(ただし、環境保護の面ではあまり効果が見られなかったようだ)。そのほか、9月には一律燃料補助手当が出たり、育児手当が一時的に増えたりと、わずかながらも何らかのサポートはある。

原発議論が再燃

今年末に操業停止が予定されている3つの原子力発電所の続行を望む声も増えている。原子力法により12月31日付で操業停止となっているが、ドイツ人の約78%が継続を望んでいるとも言われ、キリスト教社会同盟(CSU)党首でバイエルン州首相のマルクス・ゼーダーやドイツキリスト教民主同盟(CDU)党首フリードリヒ・メルツらもこれを支持している。

一方、現首相のオラフ・ショルツ(ドイツ社会民主党 SPD)や緑の党のロバート・ハベック経済相などは現状案を固持するつもりだ。連邦核廃棄物管理安全局(BASE)のウォルフラム・ケーニッヒ所長によると、3 原発による現在の電力供給量は全体のわずか6%でほとんど貢献しておらず、天然ガスの代替品にはならないという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米韓制服組トップ、地域安保「複雑で不安定」 米長官

ワールド

マレーシア首相、1.42億ドルの磁石工場でレアアー

ワールド

インドネシア、9月輸出入が増加 ともに予想上回る

ワールド

インド製造業PMI、10月改定値は59.2に上昇 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中