最新記事

東京五輪

開会式で話題のピクトグラム、64年の東京大会で初採用 漢字文化だから生まれた必然性

2021年8月5日(木)17時30分
青葉やまと

開会式で話題になったピクトグラム・パフォーマンス REUTERS/Fabrizio Bensch

<五輪として初の採用から57年を経て、再び東京から世界に話題を振りまいた>

1824台のドローンで描いた東京五輪のロゴマークがテクノロジーの象徴だったとすれば、パントマイムのパフォーマーたちが繰り広げたピクトグラムの再現劇は、アナログの力で笑顔を誘う力作だった。青白のツートンカラーの着ぐるみをまとった演者が、開会式のステージに登場。全50個の競技ピクトグラムをテンポよく再現すると、各国の選手団はキレの良い演技に見入った。

ロサンゼルス・タイムズ紙はコロナ禍での開催を念頭に、「このような時勢を受け、(開会式の)『クリエイティブ』パートの雰囲気は、華やかというよりは思慮深く、祝賀ムードというよりは芸術本位であった」と総括する。

そんななか、創意工夫でピクトグラムを再現する一幕は、一服の清涼剤となった。米ワシントン・ポスト紙は、「世界レベルのアスリートたち」が「ほとんど誰もいないアリーナを笑顔で手を振りパレードする」なか、「おそらく式典で最もエネルギッシュだった瞬間は、人間ピクトグラムの格好をした顔が見えないが活気に満ちたパフォーマーたちによって生み出された」と評価する。

●1964年東京オリンピックのピクトグラムが使われた様子から、2000年のピクトグラムへ

Concept video of the Olympic Games Tokyo 2020 sport pictograms

当該箇所を切り出したNHKによる公式映像は、YouTube上で10日間で1200万回以上再生された。2021年に話題をさらったピクトグラムだが、オリンピックにおけるその歴史は、64年の東京五輪にまでさかのぼる。

英語圏でないからこその必然性

そもそもピクトグラムとは、シンプルかつ明瞭に表現した図案によって、情報を伝達したり注意を喚起したりする手法のことだ。文章を読むよりも素早く直感的に理解できる特長を持ち、交通標識や駅構内の案内板などに広く採用されている。

また、言語に依存せず誰でも理解できる点も大きな特色だ。歴代のオリンピック大会中にも、世界中から集まるアスリートと観客たちに競技会場の場所や移動手段などを伝えるうえで、ピクトグラムは重要な役割を果たしてきた。

五輪への導入という意味では、64年の東京五輪にピクトグラムを採用したデザイナーの勝見勝氏の功績が大きいとされる。米スミソニアン誌は、64年の東京五輪でアートディレクターを務めた勝見勝(かつみ・まさる)氏とデザイナーの山下芳郎氏が牽引役となったと紹介している。当該大会では競技を表す20種に加え、救護施設やトイレなどを意味する39種が開発された。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮が短距離ミサイルを発射、日本のEEZ内への飛

ビジネス

株式・債券ファンド、いずれも約120億ドル流入=B

ワールド

中国、総合的な不動産対策発表 地方政府が住宅購入

ビジネス

アングル:米ダウ一時4万ドル台、3万ドルから3年半
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 7

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    日鉄のUSスチール買収、米が承認の可能性「ゼロ」─…

  • 10

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中