最新記事

中国

「安心安全な五輪」より「安心安全な国民生活」を!

2021年6月5日(土)20時12分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
東京五輪ロゴ

東京オリンピック・パラリンピック Issei Kato-REUTERS

菅総理は「安心安全な五輪」とくり返すが、日本国民が望んでいるのは「安心安全な日常」だ。昨年延期を決定した時よりもコロナの新規感染者数は劇的に増加している。五輪開催は精神論より科学的分析が必要だろう。

尾身会長の勇気ある警告

6月3日の参議院厚生労働委員会で、政府のコロナ感染症対策分科会の尾身会長は、東京オリンピック・パラリンピック(東京五輪と略称)について「本来は、パンデミックの中で開催するということ(自体)が普通でない」と述べた。

分科会はコロナ感染対策に関して科学者的立場から知見を述べる役割をしているわけだから、日本におけるコロナ感染の状況を見て医学的立場から東京五輪を開催した時のリスクに関して述べるのは当然のことだろう。

科学的なリスク分析のシミュレーションこそ、いま最も求められているものであり、「平和」、「絆」、「勇気」・・・など抽象的な精神論でコロナ感染が阻止されるものではない。

リスク分析を国民に見える形で述べてくれなかったら、分科会は闇の中で行われることになり、国民の税金で開かれている会議としては適切ではない。したがって尾身発言は非常に良心的で「国民の側に立った」、敬意に値する行動だと思う。

しかし多くの報道を見ていると、どうやら菅総理をはじめとする政府側は、五輪開催に水を差すような発言をしたとして、尾身発言に不快感を抱いているという。

これまで記者会見などで菅総理は何かにつけて「すべて専門家の意見をお聞きした上で決めます」と逃げてきたはずだ。

その専門家が「なんとしても五輪を強行する」という政府の方針に反することを言ってはならないとするのだったら、これはもう民主主義の社会ではなく、中国の独裁体制並みの「御用学者を集めた民主」に成り下がることになる。

学者集団を「傀儡」と位置付けてしまえば、民主主義はその時点で死ぬ。

幸いにして、日本は中国のようにネット発言まで削除するというところにまでは行っていないので、私見を述べたいと思う。

五輪延期を決定した時と比較した現在の感染者の状況

私はもちろん感染症に関しては素人なので、政府が発表し、NHKがまとめてくれているデータに沿って、社会現象としてのコロナ感染者の推移を客観的に自分の視点で考察してみたい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、米指標が労働市場減速を示唆

ビジネス

ディスインフレ進行中、「相当な」不確実性が存在=S

ビジネス

USスチールは米にとどまるべき、バイデン氏の方針変

ビジネス

米国株式市場=ダウ7日続伸、米指標受け利下げ観測高
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 2

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽しく疲れをとる方法

  • 3

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 4

    上半身裸の女性バックダンサーと「がっつりキス」...…

  • 5

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 6

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    自民党の裏金問題に踏み込めないのも納得...日本が「…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中