最新記事

SNS

右派SNSパーラーのネット復帰のウラに怪しいロシア企業

What Is DDos-Guard? Parler Website Back Thanks to Russian Tech Company

2021年1月20日(水)16時50分
ジェイソン・マードック

パーラーのアイコン(写真の赤いアイコン)はスマホのアプリストアからも削除された BackyardProduction/iStock.  

<追放されたアメリカの右派サイトのネット復帰を手助けしたのは、極右、人種差別主義者、過激派などとつながりのあるロシアのテック企業だった>

「言論の自由」を信奉し、「検閲」がないため極右や陰謀論者のお気に入りだったSNS「パーラー」は1月18日、部分的にインターネットに復帰した。どうやらこの復帰には、「DDoSガード」というロシア人所有のホスティングおよびウェブセキュリティ会社が手を貸しているようだ。

パーラーのサイトは、1月11日から接続できない状態になっていた。米連邦議会議事堂の襲撃事件が起こった後、取引先のテック系企業から、ヘイトスピーチやニセ情報の投稿に対する規制が不適切だとして排除された。ツイッター、フェイスブックからアカウントを閉鎖されたほか、「アマゾン・ウェブ・サービス」(AWS)はホスティングを停止、アップルとグーグルもパーラーのアプリを削除した。

そのため、パーラーのURL上に1月16日、ジョン・マッツェ最高経営責任者(CEO)がユーザーに対して「じきに復帰する」と請けあうメッセージが現れた時、事情はすぐにはわからなかった。その上マッツェはFOXニュースに対し、パーラーのホスティングが1月末までに復活できることに「自信を持っている」と語った。

レジストリ記録を見るかぎり、パーラーの使用するインターネットプロトコル(IP)アドレスは、DDoSガードという会社のもののようだ。複数のロシア人が所有するこの会社は英国で登記されており、ホスティングのほか、分散型サービス拒否(DDoS)と呼ばれるサイバー攻撃に対する保護などのサービスを提供している。

DDoSとは、さまざまなソースを起点とするトラフィックによってウェブサイトに過剰な負荷をかけ、一時的に接続不能に陥らせるタイプのサイバー攻撃だ。

極右や人種差別主義者とつながり

ロイターも報じているように、この会社は少なくとも2人のロシア人が株主と見られ、極右、人種差別主義者、過激派などのウェブサイトとつながりがある。そのうちのひとつである掲示板「8kun」(旧称「8chan」)は、Qアノンの陰謀論の拠点となり、2019年にテキサス州エルパソで起きた銃乱射事件などの白人至上主義者による攻撃の際も利用されていた。

議会襲撃事件後、DDoSガードはガーディアン紙に対し、8kunのホスティング会社であるワシントン州のバンワ・テック(VanwaTech)との関係を打ち切ったと述べていた。同紙によれば8kunは2020年10月から、DDoSガードのDDoS保護サービスを利用していたという。

DDoSガードのQアノンや8chanとのつながりを最初に報じたのは、サイバーセキュリティに詳しいジャーナリストのブライアン・クレブスだ。クレブスは、DDoSガードが、テロ組織「ハマス」の公式サイトをホスティングしているとも伝えていた。ロシアのビジネス・IT専門メディア「ティアドバイザー(TAdviser)」によれば、ロシア国防省にサービスを提供していたこともあるようだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米雇用なお堅調、景気過熱していないとの確信増す可能

ビジネス

債券・株式に資金流入、暗号資産は6億ドル流出=Bo

ビジネス

米金利先物、9月利下げ確率約78%に上昇 雇用者数

ビジネス

現在の政策スタンスを支持、インフレリスクは残る=ボ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前の適切な習慣」とは?

  • 4

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 5

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 6

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    映画『オッペンハイマー』考察:核をもたらしたのち…

  • 9

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中