最新記事

日本社会

七五三にしか見えない日本の成人式を嘆く

2021年1月16日(土)09時00分
にしゃんた(羽衣国際大学教授、タレント)

11日に横浜アリーナで開催された成人式の会場付近で警察官ともみ合いになる参加者 Issei Kato-REUTERS

<成人した者を祝福するという趣旨から、成人した者が感謝して志を誓う機会へと変えてはどうか>

コロナ禍の真っ只中に迎えることとなった今年の成人の日。日本では今年度、124万人が成人になる。本来なら、新年明けの三連休に開催が予定されていた成人式だが、大きく影響が及んだ。キャンセルされる成人式もあれば、オンラインに切り替えたところや延期されたところもあった。

通過儀礼を大事にする日本は、初宮参りに始まり、七五三などさまざまなイベントがあるが、成人式は結婚前の最大の晴れ舞台。前々から振袖姿でのこの日を思い描いていた本人はもちろん、その姿を目に焼き付けようと楽しみにしていた親御さん、着物関連の商売に関わる人々の心中はいかばかりか。

成人を迎える学生も多いが、コロナ対策により8割の大学などはオンラインやオンデマンドとなり、70年代の学生運動以来の事態だろうが、大学に数回しか行っていない者が多数派となっている。併せてオンラインなら実家からでも受講が可能となったが、しかし、いつ対面講義が再開されるかも分からず、不景気の中で無駄な二重家賃に苦しむ家庭も出てきている。踏んだり蹴ったりの状況であることを思うと胸が痛む。今、明るい未来を描くことはなかなか難しいかもしれないが、とにもかくにも成人を祝福したい。

「成人式」は世界の常識ではない

さて、いつの間にか新宿区が成人の日のニュースの常連となった。市区町村別で見た場合の外国人の数そのものと対日本人比率の高さが目立つ行政区ではあるが、留学生集住地区ということもあり、この地区の新成人4109人のうちの約半分が外国人だ。日本の未来を一足先に覗き見る意味においても、新宿区の成人の日のニュースが大きな役割を果たしていることは間違いない。

日本の成人式に楽しんで参加する外国人は実に多い。日本文化を楽しむ上で格好の機会であることは言うまでもない。と言うのも日本では年に一度のルーティンと化している「成人式」は、世界の常識ではない。日本ならではの風物詩である。ましてや「成人の日」を国民の休日にし、税金を投入して、さらには全国一斉に祝うともなると世界の常識からますます遠ざかる。

私などは職業がら留学生に囲まれているが、彼らに「成人式」について聞き取りをしても、また、自力で探しても見渡せる範囲においては日本の他には見つからない。むろん全くないわけではないが、あるとしても日本とは180%違う景色がそこにある。アフリカの部族によっては成人になった証として、それこそ命がけのバンジージャンプや、蟻が群がる手袋に手を突っ込み噛まれる痛みに耐えることなどを求める儀式が開催されるという。少なくとも無条件に「おめでとう」とチヤホヤされる景色はそこにはない。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米経済、26年第1四半期までに3─4%成長に回復へ

ビジネス

米民間企業、10月は週1.1万人超の雇用削減=AD

ワールド

米軍、南米に最新鋭空母を配備 ベネズエラとの緊張高

ワールド

トルコ軍用輸送機、ジョージアで墜落 乗員約20人の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ギザのピラミッドにあると言われていた「失われた入口」がついに発見!? 中には一体何が?
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 7
    「流石にそっくり」...マイケル・ジャクソンを「実の…
  • 8
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 9
    【銘柄】エヌビディアとの提携発表で株価が急騰...か…
  • 10
    【クイズ】韓国でGoogleマップが機能しない「意外な…
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中