最新記事

韓国

韓国超エリート大教授、自動運転の特許を中国へ横流し? 金にもの言わせ研究者集める中国「千人計画」とは

2020年10月9日(金)14時40分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

イ教授が参加した中国の「千人計画」

今回、そのKAISTから流出されたのは、各国でし烈な開発競争が行われている自動運転車の技術だ。KAISTの教授であるイ氏は、「LiDAR」と呼ばれるセンサー部分の開発の指揮を執っていた。「LiDAR」はレーザーで周囲の物体との距離および速度を調べる技術で、自動運転車の目ともいわれるほど重要な部分だ。

調べによると、イ教授は2017年から中国の「千人計画」に参加し、毎年中国の重慶理工大から3億ウォンを受け取っていたことがわかった。この「千人計画」とは、中国政府が2008年に創設した人材誘致計画のことだ。海外生まれの華僑や海外留学者、外国人研究者、優秀な学生など、国際的に優秀な人材を好待遇で中国に招聘する計画で、既に多くの人が参加している。

だが、この「千人計画」、中国国外では批判や問題が巻き起こりつつある。今年の1月に米国ハーバード大学のチャールズ・リーバー化学生物学部長は、2012年から5年間、千人計画に参加していたことを隠し虚偽申告をした疑惑で逮捕されている。また、8月にはオーストラリアのシンクタンク、戦略政策研究所(ASPI)が「フェニックス狩り」と題する報告書を発表して千人計画について知的財産の流出やスパイ疑惑に繋がるということで問題提起するなど、各国からこのプロジェクトに批判の声があがっている。

特許技術を横流し?

KAISTのイ教授の場合も自動運転車センサー技術「LiDAR」を、中国に技術漏洩したとされている。イ教授は中国の大学でも「LiDAR」と同様の研究発表をしているが、これについてはKAISTが特許をもっているため違法行為だ。さらに、KAISTと中国重慶理工大の研究員同士交流を目的としたオンライン上には、72件もの研究資料が公開されていることがわかった。

大田市地検特許犯罪調査部は、9月14日産業技術流出と営業秘密国外漏洩、産業技術保護法違反などでイ教授を拘束起訴し、24日には大田地方裁判所で初公判が開かれた。ところが、イ教授は弁護士を通じ、「千人計画に選抜される前からKAISTと重慶理工大が行っていた国際交流プログラムの一つ。共同研究をしていただけ」「技術流出は絶対にしていない」と反論、さらに72件の研究資料については、「初期アイデア水準であり、法に触れるような国家核心技術などではない」と、検察の主張に真っ向から反論している。

さらに、イ教授の拘束後、イ教授とKAISTを取り巻くさまざまな疑惑が次々と浮上してきた。まず、KAIST側は技術流出の事実を知らなかったと発表したが、これについてさっそく事実と異なるという声があがった。実は、2018年韓国大統領府のウェブサイトに設置されている国民請願に「KAISTイ教授が千人計画に参加している。この事実について訴えたが大学側は何もしてくれなかった」という請願記録が残っていたのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年2月以来の低水準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 8

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 9

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中