最新記事

ビジネス

サザンオールスターズ横浜アリーナ無観客ライブ配信は「ウィズコロナ」の音楽ビジネスを切り開くか?

2020年6月24日(水)18時40分

エンターテインメント業界が新型コロナウイルスの影響に苦しんでいる。写真は千葉市で行われたライブ会場で2009年8月撮影(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon )

エンターテインメント業界が新型コロナウイルスの影響に苦しんでいる。ライブの中止が相次ぎ、業界への悪影響は6900億円に及ぶとの試算もある。こうした中、活路として期待されているのがネット配信だ。新たな収益源となり得るのか、人気バンド「サザンオールスターズ」が25日に行う無観客ライブ配信が一つの試金石として注目されている。

大物が乗り出す有料配信

サザンの無観客ライブは、会場の横浜アリーナから8つのメディアを通じて配信される。パソコンやスマートフォンなどのほか、一部のメディアではテレビでも視聴が可能だ。料金は3600円と、昨年のアリーナ公演のチケット代9500円の4割程度に抑えられている。

アリーナの席数は約1万3000だが、ネット配信はテクニカル的な制約を除けばほぼ無限大。収益の一部はコロナの治療や研究に当たる医療機関の支援に充てられるが、単発のイベントとしては「3─4万人が視聴すれば、会場開催と同等の収益が確保できるのではないか」(プロモーター業界関係者)とみられている。

ミュージシャンの矢沢永吉さんも、商品化していない過去のライブ映像を配信する。第1弾は27日で、価格は2800円としている。

いずれも有料とした点がポイントだ。新型コロナの拡大でアーティストのネット配信は増えたが無料が多く、ビジネスとしては成立しにく​かった。「成功すれば業界は活気​づ​く。舞台演出を含めたパフォーマンスがオンラインでどのように評価されるかも​今後の​ヒントになる」(イベント関係者)と期待が大きい。

有料のライブ配信は海外が先行しており、成功例もある。韓国では14日、「BTS(防弾少年団)」が無観客ライブを1チケット3万9000ウォン(約3500円)で配信し、107の国・地域から約75万アクセスを集めた。「SUPER JUNIOR」や「東方神起」の5月のライブ配信にも、会場での開催を上回るアクセスがあった。

苦しむ業界、「再起できないリスク」に危機感

ライブエンターテイメント業界は、コロナの流行を受けてライブの中止・延期を余儀なくされている。5月に会見したぴあの矢内廣社長によると、音楽ライブやスポーツの中止・延期の総数は2─5月で19万8000本、入場料金は3600億円消失した。

ぴあ総研は、来年1月までの1年間で中止・延期は43万2000本、入場できない人数はのべ2億2900万人に達すると予想。入場料は19年推計の77%にあたる6900億円が失われるとされ、「完全回復には来年1年くらいはかかるのではないか」(矢内氏)という。感染拡大の第2波や第3波があれば、回復に要する時間はさらに伸びかねない。

ビジネス停滞の長期化で、ライブを支えるスキルやノウハウを持った人材が流出したり廃業したりすることへの懸念も強い。矢内社長は「業界として再び立ち上がれなくなるリスクがある」と危機感を示した。


【関連記事】
・スウェーデンが「集団免疫戦略」を後悔? 感染率、死亡率で世界最悪レベル
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・東京都、新型コロナウイルス新規感染31人を確認 6日連続で20人超え
・韓国、日本製品不買運動はどこへ? ニンテンドー「どうぶつの森」大ヒットが示すご都合主義.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米鉱工業生産、4月製造業は0.3%低下 市場予想下

ビジネス

米4月輸入物価、前月比0.9%上昇 約2年ぶり大幅

ワールド

EXCLUSIVE-トルコ、予算削減額は予想上回る

ビジネス

米金利維持が物価目標達成につながる=クリーブランド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 3

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃のイスラエル」は止まらない

  • 4

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 5

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 6

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 7

    2023年の北半球、過去2000年で最も暑い夏──温暖化が…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    仰向けで微動だにせず...食事にありつきたい「演技派…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中