最新記事

メディア

金正恩の動静でCNNインドネシアが放送事故 韓流スターのヒョンビンを北朝鮮兵士に

2020年4月29日(水)21時35分
大塚智彦(PanAsiaNews)

CNNインドネシアのニュース画面で金正恩と並ぶのは、ドラマで北朝鮮将校を演じたヒョンビン。 Yonhapnews / YouTube

<新型コロナのパンデミックに金正恩の重体説。ニュース専門チャンネルも緊張が続くだけにミスが起きるのも無理はない?>

北朝鮮の最高指導者・金正恩の動向に関するニュースが世界中を駆けめぐり、健康状態が判然としない。そんななか、CNNインドネシアが金正恩のニュースを伝える映像で、ありえない写真を使用する放送事故を起こし謝罪する事態が発生した。

インドネシアの地元メディアやCNNインドネシアが伝えたところによると、4月21日午後のニュース番組の中で金正恩の動静に関して「重体説が流れている」などスタジオでメインキャスターが伝えていた。このニュースの中でキャスターの背後にある大きなプラズマ画面には2人の人物の顔写真が並んでいた。

左側には皮のコートと帽子を被った金正恩の写真があり、右側には北朝鮮人民軍の軍服姿の人物の写真が映っていた。一般の視聴者には北朝鮮の指導者と人民解放軍将校の2人が並んでいるように受け取られた。

だが、このニュースを見たインドネシア人の韓流ファンを中心に「あれは韓国の俳優ヒョンビンではないのか」「ヒョンビンに間違いないが、なぜ彼の写真が金正恩と並ぶのか」などと指摘が殺到。

CNNインドネシアが確認したところ、問題の写真は実在の北朝鮮人民軍の写真ではなく、北朝鮮人民軍の軍人を演じた韓国の人気俳優ヒョンビンに間違いがないことが確認されたという。

これはヒョンビンが主演した韓国のヒットドラマ『愛の不時着』の1シーンで、ヒョンビンが演じる北朝鮮人民軍の将校姿の写真だった。

禁じられた南北のラブストーリー

『愛の不時着』は2019年12月14日から韓国のケーブル局tvNで放送された全16話のテレビドラマシリーズで、Netflixを通じてほぼリアルタイムで全世界にも配信。日本をはじめインドネシアでも多くの韓流ファンをはじめとする視聴者を魅了したラブストーリーだ。

人気女優ソン・イェジン演じる財閥の跡取り娘であるユン・セリが、パラグライダーを操縦して飛行中に突然吹いてきた風にあおられ、北朝鮮領内に不時着するところからこのドラマは始まる。

彼女を匿いながら南の女性であるという身元を守り抜こうとする北朝鮮の将校リ・ジョンヒョクをヒョンビンが演じ、次第にお互いに心が魅かれ、愛し合う過程がときにコミカルに描かれる。

しかしそこには北と南という分断国家が2人の前に立ちはだかり、愛する男女の関係は緊張感を高めつつラスト向けて盛り上がりをみせる──という上質なドラマになっている。

韓流ファンの多いインドネシアでも多くの人がNetflixなどでこの『愛の不時着』をすでにみていたとみられ、CNNインドネシアのヒョンビン写真は瞬く間にネットで拡散された。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英中銀が金利据え置き、総裁「状況は正しい方向」 利

ビジネス

FRB「市場との対話」、専門家は高評価 国民の信頼

ワールド

ロシア戦術核兵器の演習計画、プーチン氏「異例ではな

ワールド

英世論調査、労働党リード拡大 地方選惨敗の与党に3
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 5

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 6

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 7

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 8

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 9

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 10

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 9

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 10

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中