最新記事

生物

コモドドラゴンの体内に「鎧(よろい)」があることが発見される

2019年9月18日(水)18時00分
松岡由希子

コモドドラゴンは鎧のような「皮骨」で覆われていた Credit: The University of Texas at Austin.

<コモドドラゴンには、鼻から尾にかけて、鱗に覆われた皮膚の下に小さな骨からできた鎧のような「皮骨」が存在することが米テキサス大学などの調査で明らかとなった......>

インドネシアのコモド島と周辺の島々に生息するコモドドラゴン(コモドオオトカゲ)は、頑強な大型の爬虫類で、素早く動き、口中の毒を使ってシカや水牛などの大型哺乳動物をも捕食することで知られる。

そして今回、コモドドラゴンには、鼻から尾にかけて、鱗に覆われた皮膚の下に小さな骨からできた鎧のような「皮骨」が存在することが米テキサス大学などの調査で明らかとなった。

幼体には「皮骨」がない......

米テキサス大学オースティン校とフォートワース動物園との共同研究チームは、高分解能X線コンピュータ断層撮影(CT)によって「コモドドラゴンの成体には鎧のような『皮骨』が発達している一方、幼体には『皮骨』がない」ことを発見した。一連の成果をまとめた研究論文は、2019年9月10日に発行された解剖学専門の学術雑誌「アナトミカル・レコード」で公開されている。

研究チームは、19歳半で死亡した長さ9フィート(約2メートル74センチ)のコモドドラゴンの成体と生後2日で死亡したコモドドラゴンの幼体を、テキサス大学の高分解能X線CT装置で調べ、それぞれの骨格をデジタル化した。装置の制約から、成体でスキャンしたのは頭部のみであったが、その「皮骨」が詳細に映し出された一方、幼体にはこれがまったく見られなかった。

Adult-Komodo-Dragon.jpg

The University of Texas at Austin


研究論文の共同著者でもあるテキサス大学オースティン校のクリストファー・ベル教授は、「コモドドラゴンの幼体は多くの時間を樹上で過ごし、成体になるにつれて、他のコモドドラゴンと争い始める。この頃になると、他の個体から身を守るために『皮骨』の鎧が役に立つようになるのだろう」との見解を示している。

また、この成体は、これまで確認されているもののなかで最も長寿のコモドドラゴンであったことから、研究論文の筆頭著者であるテキサス大学オースティン校のジェシカ・マイサノ博士は「老化に伴い、死に至るまで、トカゲの骨が骨化し続けるのではないか」とみている。

頭部がほぼ完全に「皮骨」で包み込まれている

皮膚に生じた骨性の「皮骨」は、コモドドラゴンのみならず、ワニやトカゲといった爬虫類やカエルなどの両生類、アルマジロのような哺乳類でも確認されてきた。コモドドラゴンの成体にある「皮骨」は、形状が多様で、体を完全に覆っているのが特徴だ。

Komodo-Dragon-Osteoderms.jpg

コモドドラゴンの「皮骨」Credit: The University of Texas at Austin.

研究チームでは、トゲオオトカゲやサバンナオオトカゲなど、7種類のトカゲの頭部とコモドドラゴンを比較。これら7種類のトカゲの「皮骨」の形状は1種類もしくは2種類であった一方、コモドドラゴンの「皮骨」には4種類の形状があり、目の周り、鼻孔、口、光を受容する松果体を除いて、頭部がほぼ完全に「皮骨」で包み込まれていた。

マイサノ博士は「オオトカゲ科に属するトカゲの多くは蠕虫状の『皮骨』を持っているのみだが、コモドドラゴンは、トカゲの中では珍しく、4種類もの『皮骨』を持っている」と述べ、「コモドドラゴンの『皮骨』を見たときは、本当に感動した」と振り返っている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

韓国、外資銀の国内為替取引を後押し 外国人投資家の

ビジネス

午前のドルは153円後半で軟調、ポジション調整の売

ビジネス

午前の日経平均は続伸、米CPI後の株高好感 円高で

ビジネス

金融分野のAI利用、規制が必要となる可能性=ECB
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 5

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 9

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 10

    奇跡の成長に取り残された、韓国「貧困高齢者」の苦悩

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中