最新記事

韓国事情

韓国にとって、CPTPP加盟は「究極の選択」

2019年2月22日(金)15時10分
佐々木和義

韓国にとって加盟しても問題、加盟しなくても問題...... Kim Hong-Ji-REUTERS

<韓国政府は、環太平洋経済パートナーシップに関する包括的及び先進的協定(CPTPP)の主要加盟国と非公式協議を開始することを決定したが、それは「究極の選択」だった......>

韓国政府は、日本などが主導する環太平洋経済パートナーシップに関する包括的及び先進的協定(CPTPP)の主要加盟国と非公式協議を開始することを決定した。ホン・ナムギ副首相兼企画財政部長が、2019年2月14日に行われた対外経済長官会議で明らかにしたもので、協定のガイドラインは加盟を希望する国に主要加盟国との非公式協議を求めている。

韓国は日本とメキシコを除く加盟9か国と自由貿易協定を締結しており、CPTPPへの加盟は日本とFTAを締結する効果が大きい。産業通商資源部は対日貿易赤字の拡大が予想される協定に慎重で、市場開放を求められる農水産当局も消極的だが、企画財政部と外交部は積極的に取り組みたい考えだ。

TPPからCPTPP

環太平洋パートナーシップ協定(TPP)は、シンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4か国が経済自由化を目的にはじめた経済連携協定で、米国のオバマ前大統領が参加を表明し、一気に拡大した。関税の引下げと撤廃に加えて、サービスや投資の自由化、知的財産、金融サービス、電子商取引、国有企業の規律など幅広い分野を対象とする経済連携協定である。日本は2013年に参加を表明している。

2016年2月、日本や米国を含む12か国が署名したが、2017年1月に就任した米トランプ大統領が離脱を表明し、暗礁に乗り上げた。その後、日本やオーストラリアが主導となり、米国を除く日本、メキシコ、カナダ、シンガポール、マレーシア、オーストラリア、ニュージーランド、ベトナムなど11か国が署名し、TPP11協定(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定:CPTPP)が2018年12月30日に発効した。

世界のGDPの約13%を占める経済協定で、新たに加盟を希望する国は協定に基づく市場開放はもちろんのこと、11か国の要求事項を受け入れなければならない。タイや英国などが参加を検討しており、中国と米国も関心を示している。

日韓FTAの協議は中断したまま

韓国の対外貿易は輸出入総額の40%以上を中国、日本、米国が占めている。2018年の貿易収支は696億ドルの黒字で、取引額が最も多い対中国貿易は556億ドル、対米国は138億ドルの黒字だった。一方、対日貿易は240億ドルの赤字で、2004年以降200億ドルを超える貿易赤字が続いている。

サムスン、LG、現代をはじめとする韓国のグルーバル企業に電子部品や機械部品、化学製品などを供給している日本企業は多い。韓国内に工場を建設して製品を納入している企業が多い中、あるメーカーは韓国内の製造コストと日本製の製造・流通コストの差が小さいとして、韓国向け製品のほとんどを日本からの輸出に切り替えた。

いっぽう、日本と韓国が2002年に合意したFTAの協議は2004年に中断し、2012年から日中韓3か国の協議が進められているが妥結の目処は立っていない。日本の関税は工業製品など0%の品目が多く、日韓FTAが締結されると韓国が一方的に日本に市場を開放する結果となり、韓国の対日貿易赤字はさらに拡大することが懸念されているのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想以上に鈍化 失業率3

ビジネス

米雇用なお堅調、景気過熱していないとの確信増す可能

ビジネス

債券・株式に資金流入、暗号資産は6億ドル流出=Bo

ビジネス

米金利先物、9月利下げ確率約78%に上昇 雇用者数
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前の適切な習慣」とは?

  • 4

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 5

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 6

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    映画『オッペンハイマー』考察:核をもたらしたのち…

  • 9

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中