最新記事

ヘルス

プラスチック製ストローの廃止でスタバの客が支払う代償

Starbucks’ Plastic Straw Ban

2018年8月1日(水)17時45分
レイチェル・ハンプトン

プラスチック製ストローは全廃され、直接飲める新しいふたに置き換わる Mark Makela-REUTERS

<容器から直接飲むと酸と糖分が歯に当たり知覚過敏や虫歯のリスクが高まる恐れが>

ちりも積もれば山となる。その格好の例がプラスチック製のストローだ。

最近の推定によれば、世界中の海岸に行き着いたプラスチック製ストローは約83億本。この状況を改善しようと、米ワシントン州シアトルでは7月1日、飲食店などでのプラスチック製のストローやフォークなどの使用を禁止する条例が施行された。

こうした動きに素早く反応したのが、シア卜ルに本社を構えるスタバことスターバックスだ。同社は7月9日、世界中にある2万8000の全店舗でプラスチック製ストローを20年までに全廃すると発表した。代わりにストローなしで飲める新タイプのふたを段階的に導入するという(北米では一部導入済み)。

スタバによると、この新しいふたは「親指大のティアドロップ型飲み口」が特徴で、ストローと違ってリサイクル可能。今後1年半以内に、フラペチーノを除く全てのコールドドリンク容器でこのふたが標準になる。

スタバの推定では、これで年間10億本以上のストローを減らせるらしい。プラスチック製ストロー追放の波は他の企業にも広まっていて、マクドナルドはイギリスとアイルランドの店舗で段階的に廃止すると発表した。

スタバの発表に環境保護派は大喜びだろうが、毎日飲むコーヒーから白い歯を守る唯一の道具が消滅するとして恐れおののく人もいる。

ハーバード大学歯科大学院のニサーグ・A・パテルによると、その恐怖に根拠がないわけではない。「ストローを使って飲むのと容器から直接飲むのとを比べたら、(後者のほうが)多くの酸と糖に歯がさらされるはずなので、ダメージを受けるリスクが大きい」

このダメージは美的なものだけではない。酸と糖質が多い食べ物や飲料(つまりスタバのメニューのほとんど全て)は、歯を駄目にする細菌が繁殖しやすい環境をつくり出し、歯のエナメル質を溶かして知覚過敏を引き起こすことがある。

気になる人はうがいを

パテルによると、興味深い研究論文が98年の英国歯科ジャーナルに掲載されている。研究者は歯の表面に当たる飲料の分量を調べるためにビデオカメラで撮影を行い、飲料を容器から飲む場合とストローを使って飲む場合とを比較した。その結果、ストローのほうが飲料に接触する歯の表面積を効果的に減らせることが分かったという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中