最新記事

超高齢化社会

アニメ大国ニッポンは介護もロボットで 高齢化する世界をリード

2018年3月30日(金)13時54分


高齢化がロボット需要増大をもたらす日

団塊の世代があと数年で後期高齢者となる日本にとって、こうした課題を解消して介護ロボットの普及を図ることが喫緊の課題だ。

人手不足を補うために外国人の介護人材受け入れ拡大を図ろうにも、今のところ遅々として進んでない事情も拍車をかける。

入国管理法改正により、16年に外国人が介護業務に従事するための在留資格を設ける介護ビサという新たな制度を創設したものの、実際にこれを受け取った外国人は17年末現在で18人だけだ。日本語の国家試験が高いハードルとなっている。

こうした中、政府には、国内での介護ロボット普及に加え、海外にも輸出することで成長産業として育成する狙いがある。

ドイツ、中国、イタリアなど日本と同様の人口問題を抱える国では介護ロボットのニーズがある。経済産業省ロボット政策室の安田篤室長は、「他国でも高齢化問題がいずれ起こってくる」と指摘する。実際、昨年は「新とみ」に世界各国から100グループ以上が見学に訪れているという。

日本製ロボットの輸出も始まっており、パナソニックでは台湾向けに介護ベッドの出荷を始め、「パロ」はデンマークの老人ホームに400台が導入された。

今のところ世界の介護ロボット市場はまだ小規模で、国際ロボット連盟によると、16年現在、1920万ドル(20億円強)に過ぎない。しかも供給側のほとんどが日本製ロボットだ。もっとも日本での市場規模は今後急拡大する見通し。経済産業省の試算では、市場規模は日本の人口の3分の1が65歳以上となる2035年までには、4000億円に膨らむ。

オックスフォード人口問題研究所のジョージ・リーソン所長は「これは潜在的な大規模マーケットだ」と指摘。「人々は日本の高齢化社会に目が覚めるだろう。ロボティクスが高齢化社会のニーズに応えるパッケージの一つであることに」と語る。

(マルコム・フォスター 翻訳:中川泉 編集:石田仁志)

[東京 30日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20240528issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月28日号(5月21日発売)は「スマホ・アプリ健康術」特集。健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日本経済「持ち直しの見方、変わらず」=植田日銀総裁

ワールド

大統領選後に拘束記者解放、トランプ氏投稿 プーチン

ビジネス

ドイツ銀行、9年ぶりに円債発行 643億円

ビジネス

中国は過剰生産能力を認識すべき、G7で対応協議へ=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレドニアで非常事態が宣言されたか

  • 2

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決するとき

  • 3

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」...ウクライナのドローンが突っ込む瞬間とみられる劇的映像

  • 4

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 5

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 6

    韓国は「移民国家」に向かうのか?

  • 7

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 8

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 9

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 10

    高速鉄道熱に沸くアメリカ、先行する中国を追う──新…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 4

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 5

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 8

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 9

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 10

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中