最新記事

旅行

アジア人観光客が世界のトラベル市場を牽引する

2017年10月7日(土)13時00分
アフシン・モラビ(ジャーナリスト)

インド人客も観光業界のお得意さまだ。現在、外国に旅行するインド人は年間ざっと2000万人だが、20年までには5000万人に上ると、UNWTOは予測している。若年層の人口比率が高く、中間層が増えつつあるため、外国旅行を楽しむ人は着実に増えるだろう。

インド人旅行者に人気があるのはシンガポール、ドバイ、バンコク、パリ、ロンドン、ニューヨーク。ヨルダンやオーストラリア、イスラエルも負けじとビザ取得手続きを簡素化するなどインド人客の誘致に乗り出している。

決済サービス大手のビザ・インターナショナルによると、25年までにアジア人が外国旅行で使うカネは最高で年間3650億ドルに達し、アメリカ人旅行者が使う金額の3倍になる見込みだ。世界の人口に占めるアジア人の割合が高まることから、こうした傾向にはさらに拍車が掛かるとみられる。今でも世界の人口の60%近くがアジアに集中しているが、30年までにはアジアとアフリカの2地域で世界の人口の80%近くを占めると予測されている。

ヨーロッパではソ連崩壊とEU誕生で人の流れが急速に拡大したおかげで、特に若い世代は国境の垣根にとらわれなくなった。20世紀の2つの大戦の舞台となった大陸で、こうした変化が起きた意味は大きい。

アジアでもここ10年ほどの観光ブームで同じような効果が期待できそうだ。もちろん中国人旅行者が東京で爆買いしたからといって東シナ海問題が解決するわけではない。だが長期的に見れば互いの国を訪れる人が増えることで、より平和なアジアに向けたムードが醸成される。

観光ブームの背景には航空機が利用しやすくなったこともある。香港大学のマックス・ハーシュ助教によると、そのおかげで「アジアの都市部に住む中間層が頭に描く地図が変わった」という。訪れる範囲が広がり、アジア人は自信をつけた。この自信が欧米とそのほかの地域の「希望の格差」になっている。

調査機関ピュー・リサーチセンターによると、新興国と途上国の人々はアメリカ人、ドイツ人たちより未来に対して楽観的だ。欧米の中間層は衰退しているが、新興国、特にアジアでは中間層に勢いがあることから未来が明るく見えるのだろう。

トランプもこっそり便乗

彼らは既にスマートフォンやアルコール飲料や自動車などの業界を大きく変えている。カラチからクアラルンプール、ヨハネスブルクからジャカルタまで、新興国の中間層は世界的な都市化の波を引き起こしつつ、世界経済の消費の伸びを引っ張ってきた。ブルッキングズ研究所のホミ・カラスによると、15年から30年までに世界の中間層の消費は29兆ドル拡大する見込みだが、そのうち先進国の中間層がもたらす増加分はわずか1兆ドルにすぎない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場・午前=急騰、S&P500が3月以来の

ワールド

トランプ氏、カタールからの航空機受領を正当化 政権

ビジネス

英中銀政策委員、物価高警戒 「高い上昇圧力」と指摘

ワールド

印首相「パキスタンはテロインフラ排除を」、国際社会
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映った「殺気」
  • 3
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王子との微笑ましい瞬間が拡散
  • 4
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 5
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 6
    「出直し」韓国大統領選で、与党の候補者選びが大分…
  • 7
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因…
  • 8
    「がっかり」「私なら別れる」...マラソン大会で恋人…
  • 9
    ロシア艦船用レーダーシステム「ザスロン」に、ウク…
  • 10
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 7
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..…
  • 10
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中