最新記事

宇宙

地球類似惑星の発見に役立つ新手法、日本人女性率いるNASAの研究チームが発表

2017年10月27日(金)16時30分
高森郁哉

extra-terrestrial life- Youtube

系外惑星(太陽系の外に存在する惑星)で生命が居住するには、水の存在が不可欠だ。このほど米航空宇宙局(NASA)は、そうした系外惑星に水が保たれるかどうかを3Dモデルでシミュレートする画期的な手法を開発したと発表した。将来、生命居住可能な系外惑星の発見に役立つとしている。

東工大地球生命研究所の藤井友香氏らの研究

今回の研究成果をまとめた論文は、天体物理学分野の学術誌「アストロフィジカルジャーナル」に掲載された。論文の筆頭著者は、東京工業大学地球生命研究所の准主任研究者で、ゴダード宇宙科学研究所にも籍を置く藤井友香氏

恒星の周りを公転する惑星は、恒星に近すぎると過剰な熱エネルギーによって水が蒸発し、逆に遠すぎると熱エネルギーが不足して水が凍りついてしまう。その中間で、惑星に水が液体の状態で存在できる範囲を「ハビタブルゾーン(生命居住可能領域)」と呼ぶ。

惑星に水が存在するためには、大気が重要なはたらきをする。惑星の大気の状態をシミュレートする従来のモデルは、垂直方向の1次元だけで計算していた。しかし藤井氏らが開発した新モデルは、大気が循環するプロセスを3次元的にシミュレートすることができ、より現実に近い推測が可能になる。

惑星の水(海)が熱されて水蒸気になり、成層圏に上昇すると、紫外線によって水素と酸素に分解される。このうち、極めて軽い水素は惑星の重力から逃れて宇宙空間に拡散する。このように惑星の海が蒸発により失われる過程は、成層圏が高湿度になることから「湿潤温室状態に入った」と呼ばれる。

湿潤温室状態にある可能性を調べることができる

藤井氏は、湿潤温室状態になる系外惑星の大気循環に重要な役割を果たす、恒星からの放射線の種類を特定したと説明する。

系外惑星が母星(恒星)の近くを公転する場合、恒星の強い重力により惑星の自転速度が遅くなる。これにより、惑星の同じ面が常に恒星側を向いて昼と夜の面ができる、いわゆる「潮汐固定」という状態になることがある。潮汐固定が起きると、昼の面には厚い雲ができ、日傘のように恒星からの光をさえぎるはたらきをする。

この状態では惑星が冷たい状態に保たれ、水蒸気の上昇を防ぐ可能性があるが、研究チームは、先の3Dモデルを使って、湿潤温室状態に入らせるために必要な熱を供給する恒星からの近赤外線の量を特定した。

近赤外線の量は、恒星が低温であるほど増える。したがって、低温の恒星の近くを公転する多くの惑星のうち、従来のモデルに基づく予想に反して、生命居住可能な惑星が見つかる可能性が高まるという。

今回の研究成果により、恒星に近い系外惑星が湿潤温室状態にある可能性を調べることができ、生命居住が可能かどうかを見極めるのに役立つとしている。


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

8月完全失業率は2.6%に上昇、有効求人倍率1.2

ワールド

ボーイング「777X」、納入開始は2027年にずれ

ワールド

べネズエラ沿岸付近に戦闘機5機、国防相が米国を非難

ビジネス

テスラ第3四半期納車が過去最高、米の税控除終了で先
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 3
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 4
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 5
    イスラエルのおぞましい野望「ガザ再編」は「1本の論…
  • 6
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」…
  • 7
    1日1000人が「ミリオネア」に...でも豪邸もヨットも…
  • 8
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 9
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 10
    AI就職氷河期が米Z世代を直撃している
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 4
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 5
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 8
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 9
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 10
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中