最新記事

エネルギー

アメリカの太陽発電ブーム、「トランプ関税」で終焉迎える?

2017年7月31日(月)16時47分

こうして、最悪の事態に向けた準備に追われる太陽光発電産業のパニック的な需要により、ソーラーパネルのスポット価格は、ここ数週間で最大2割も上昇した。新たな関税導入を恐れた設置業者らが、パネルの確保を急いでいるためだ。

慎重な国内エネルギー利用者は、太陽光プロジェクトを一部保留しており、メーカーは他の市場開拓も視野に置いている。投資家の一部も安全な資金待避先を探している状態だ。

米国における太陽光発電の大規模プロジェクトに対する第2・四半期の投資額は14億ドルを記録。第1・四半期の32億ドル、前年同期の17億ドルから低下しており、これはサニバの提訴を巡る懸念を反映したものだ、とマーコム・キャピタル・グループの調査は示している。

特に影響を受けやすいのは、電力事業者や大企業向けにサービスを提供するソーラーファーム(大規模太陽光発電所)の開発事業者だ。彼らのプロジェクトのコストの半分はソーラーパネル費用が占めている。

パネル価格の急騰は「大規模ソーラー事業者にとって大惨事になりかねない」と太陽光パネル製造大手サンパワーのトム・ワーナー最高経営責任者(CEO)は懸念を隠さない。

「開発事業者は危機感を抱き、対応策を練っている」と同CEOは語る。カリフォルニア州サンノゼに本拠を置くサンパワーは、仏石油大手のトタルが株式の過半数を保有している。

一般家庭向けにサービスを提供する太陽光発電事業者も、同じく神経を尖らせている。パネル価格が急騰すれば、住宅用パネル設置も、それに伴うすべての雇用も減速しかねないからだ。

トランプ大統領が外国メーカーを罰するために動けば、自身が守ると公約した国内ブルーカラー労働者に打撃を与えかねない、とサンフランシスコに本拠を置くサンランのエド・フェンスター会長は指摘する。太陽光発電産業の雇用は、トランプ氏が擁護してきた炭鉱産業の雇用の5倍以上にも達している。

「ソーラーパネルに対する課税は、この国が最も必要としている、給与水準の高い雇用を台無しにしてしまう。そうした雇用は輸出することも自動化することもできない」とフェンスター会長は語る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

バチカンでトランプ氏と防空や制裁を協議、30日停戦

ワールド

豪総選挙は与党が勝利、反トランプ追い風 首相続投は

ビジネス

バークシャー第1四半期、現金保有は過去最高 山火事

ビジネス

バフェット氏、トランプ関税批判 日本の5大商社株「
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 2
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1位はアメリカ、2位は意外にも
  • 3
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見...「ペットとの温かい絆」とは言えない事情が
  • 4
    野球ボールより大きい...中国の病院を訪れた女性、「…
  • 5
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 6
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 7
    「2025年7月5日天体衝突説」拡散で意識に変化? JAX…
  • 8
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 9
    「すごく変な臭い」「顔がある」道端で発見した「謎…
  • 10
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 10
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中