最新記事

LGBT部隊

シリアでISISに反撃する初のLGBT外国人部隊

2017年7月31日(月)18時16分
ジャック・ムーア

世界のゲイが立ち上がる(7月22日に独ベルリンで行われた毎年恒例のゲイ・プライド・パレード) Fabrizio Bensch-REUTERS

<ISIS支配下で迫害の標的にされてきたLGBTコミュニティーが、外国人兵士を中心にISISと戦う初めてのLGBT部隊をシリアで創設した>

ISIS(自称イスラム国)による迫害に苦しんできたLGBT(同性愛者などの性的少数者)やその支持者たちが、シリアの戦場で反撃に出た。ISISの支配下で暮らすLGBTの人々はこれまで、建物の屋上から突き落とされたり、投石で処刑されたり残酷な仕打ちを受けてきた。ISISが犯行声明を出した米フロリダ州オーランドのLGBTが集まるナイトクラブで発生した銃乱射事件でも、多数の若者が犠牲になった。

【参考記事】LGBTはイスラム過激派の新たな標的か

シリア北部でクルド人と共にISISと戦う外国人義勇兵たちは7月24日、対ISIS戦線で初のLGBT部隊の創設を宣言した。その名も、「同性愛者の反乱・解放軍」(TQILA、テキーラ)だ。

TQILAは「国際自由軍」(IFB)の傘下に置ある。IFBは、ISISと戦うためにシリア北部に渡航した外国人戦闘員の寄せ集め部隊で、シリアの少数民族クルド人武装組織「人民防衛隊」(YPG)と協力関係にある。IFBは、シリア北部ラッカの奪還作戦が最終局面に入る2カ月前の、今年4月に設立されたばかりだ。

すでにISISとの戦いに参戦中

TQILAはツイッターに、TQILAのメンバーは「ジェンダーの壁を打ち破り、女性革命や広義のジェンダー革命の推進を目指す」という声明を発表。

全体の人数やLGBTの人数は明らかにされておらず、TQILAのヘバル・ロジラト報道官は安全上の理由で公表しない、と本誌に語った。

「仲間の多くはLGBTQ*コミュニティー出身だ」と、彼は言う。「今まさにラッカで戦っている」

TQILA は声明で、LGBT部隊創設の動機は「世界中のファシストや過激主義者がLGBTを『病的』『異常』『不自然』などと侮辱し、数えきれないほど多くの仲間が殺される恐ろしい光景を目の当たりにしたから」だとしている。

【参考記事】世界に広がるLGBT迫害戦争

「ゲイの男たちがダーイシュ(ISISのアラビア名)によって建物の屋上から突き落とされ、投石で殺される光景を見過ごせなかった」

声明はこう締めくくる。「撃ち返せ!同性愛者がファシストを殺す!」。そのロゴマークには、ピンクの地の上に黒いAK47自動小銃が描かれている。

【参考記事】【写真特集】多様で自由なLGBTの世界へ

シャリーア(イスラム法)に基づくISISの裁判所では、同性愛は死刑に相当し、厳格で耐え難い刑罰に処せられる。

*LGBTQ=レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、クエスチョニング(性的志向が定まっていない人)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アマゾン、3年ぶり米ドル建て社債発行 150億ドル

ビジネス

ドイツ銀、28年にROE13%超目標 中期経営計画

ビジネス

米建設支出、8月は前月比0.2%増 7月から予想外

ビジネス

カナダCPI、10月は前年比+2.2%に鈍化 ガソ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 8
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 9
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 10
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中