最新記事

一国二制度

香港返還20年 若者たちは中国への「愛国心」薄く

2017年7月1日(土)11時37分

ルドウィック・チャンさん。香港で先月13日撮影(2017年 ロイター/Bobby Yip)

香港の学生活動家Chau Ho-oiさんは、このアジア有数の金融ハブが中国に返還された20年前に生まれた。彼女はかつて、中国本土を誇りに感じたことがあったと振り返る。

2008年、11歳だった彼女は両親と並び、誇らしい気持ちで北京五輪をテレビで見た。そして、中国の選手団が、どの国よりも多い48個の金メダルを獲得するのを見て「心から興奮」したという。

「中国は素晴らしいと思った」とChauさん。「もしその時に、自分は中国人かどうか聞かれたら、はい、と答えただろう」

だが9年経った今、かつて英国領だった香港の「返還後の第一世代」は、加速度的に中国本土に背を向けつつある。

「今は、自分が中国人だとは言いたくない」と、2014年の民主化デモで拘束された経験があるChauさんは言う。「とてもネガティブな気持ちになる。100回聞かれても、同じ回答をするだろう」

香港大が20日公表した調査によると、18歳─29歳の若者120人のうち、自分が「広義の中国人」だと認めた割合は、わずか3.1%だった。半年ごとに行われているこの調査が開始した20年前は、この割合は31%だった。

ロイターがChauさんを含む1997年生まれの香港の若者10人に行ったインタビューでは、中国本土から移住した1人を含め、全員がまず「香港人」と自認し、この街に忠誠心を持っていると答えた。

香港は、19世紀に段階的に英国植民地となった。中国返還に際しては、「一国二制度」の仕組みが採用され、少なくとも50年間は、香港は独立司法や表現の自由を含めた広範な自治を認められることになった。

取材に応じた20歳の若者たちは、北京の共産党指導者が香港の自由を締め付けにかかっていることを示唆する一連の疑わしい策略を目にして、態度が硬化したと語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

為替円安、行き過ぎた動きには「ならすこと必要」=鈴

ワールド

中国、月の裏側へ無人探査機 土壌など回収へ世界初の

ビジネス

ドル152円割れ、4月の米雇用統計が市場予想下回る

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想以上に鈍化 失業率3
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 6

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 10

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中