最新記事

テクノロジー

アマゾン、ホールフーズ買収の狙いはデータ

2017年6月26日(月)17時00分
ケビン・メイニー

アマゾンのAIが完璧な品揃えを提案しくれるのか、それとも?  Carlo Allegri-REUTERS

<小売の覇者は技術で決まる。モータリゼーションの波に乗った米百貨店シアーズ、コンピューターで集めた店舗情報をいち早く経営に生かした安売り大手ウォルマート、そして今度は顧客情報とAIで武装したアマゾンの番だ>

米安売り大手ウォルマートは一時、全米一のテクノロジー企業と呼ばれたこともあるが、いつの間にか道を過った。

ウォルマートは先月、男性用衣料品オンライン販売ボノボスを発表。昨年買収した電子商取引のジェット・コムと併せデジタル小売部門を強化しようとしたが、マイケル・ジョーダンに野球をやらせるようなちぐはぐな会社になっただけだった。

その頃ネット小売り最大手のアマゾンは、北軍の闘将シャーマン将軍のように勇ましくリアル小売業に攻め入り、買い物という体験そのものを自らのイメージに作り直している。アマゾンが高級食料品店大手のホールフーズを買うと言ったとき、アマゾンが高級食材を買って何をするつもりか一言も言わなくても、我々にはすぐにイメージできる。エキゾチックな新野菜をドローンで宅配する未来の姿が。

【参考記事】高級スーパー「ホールフーズ」を買収したアマゾンの野望とは?
【参考記事】アマゾンのホールフーズ買収は止めるべきか

小売りの業態は常にテクノロジーによって変化してきた。戦後、本格的なモータリゼーションの到来とともに、通販会社だったシアーズは郊外に大型店を展開するようになった。遠くから車で大量の商品を買いにくる客のニーズに応えて、1980年代には全米最大の小売業者になった。

「IT企業」ウォルマートの時代

シアーズが急成長を続ける1962年、サム・ウォルトンがアーカンサス州ロジャーズに最初のウォルマート店舗を開く。その後、大手小売りが見向きもしないような田舎に125店舗を開く。当時のウォルマートはまだ、とくに革新的な小売業者ではなかったが、社会を変えるもう一つのテクノロジーが生まれた。コンピューターだ。

1975年、ウォルマートはIBMの汎用コンピューターを借りて全店舗から情報を集め始めた。1980年代前半までには、バーコード読み取りのシステムも完備した。ウォルマートは本部に巨大なコンピューティング・パワーを備え、それを、既存の小売業者には想像もつかないようなやり方で業務に生かすためのソフトウエアを書いた。

ウォルマートは、どの店舗でどの商品が売れたかを地球上の他のどの小売業者よりもよく把握している。そのため何をどれだけ仕入れたら無駄がないかがよくわかり、他社より安い価格で売ってもより高い利益を上げることができた。コンピューターの進化の波に乗ったウォルマートは、1990年に売り上げでシアーズを抜き、全米最大になった。2002年には、フォーチュン500に入った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

NZ企業信頼感、10月は8カ月ぶり高水準 利下げ効

ワールド

米下院特別委トップ、エヌビディア最先端半導体の対中

ビジネス

午前の日経平均は続伸、「過熱」感じつつも下値では押

ワールド

ロシア、国有企業による株式購入認める 市場支援で 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨の夜の急展開に涙
  • 4
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 5
    コレがなければ「進次郎が首相」?...高市早苗を総理…
  • 6
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 7
    【クイズ】開館が近づく「大エジプト博物館」...総工…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    リチウムイオンバッテリー火災で国家クラウドが炎上─…
  • 10
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 7
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 8
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 9
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中