最新記事

スマホと脳

スマホの存在で能力低下 能力発揮したければスマホは別部屋へ

2017年6月26日(月)16時45分
松丸さとみ

mihailomilovanovic-iStock

スマートフォン(スマホ)がすぐ近くにあるのとないのとでは、タスクを遂行する能力に違いが出ることが分かった。 

スマホで認知能力低下

スマホは、私たちの生活を変えた。当然ながら、「便利に」変えたわけだが、「デジタル認知症」と呼ばれる症状が生まれるなど、便利さの陰で私たちの認知能力はネガティブな影響も受けている。

テキサス大学の研究チームがこのほど、スマホと脳の関係を調査したところ、スマホが近くにあるだけでタスクを遂行する能力が低下するという、驚きの結果が明らかになった。サイエンス・デイリーが伝えた。

調査したのは、テキサス大学オースティン校にあるマコームズ・スクール・オブ・ビジネスのエイドリアン・ワード准教授のチーム。800人近いスマホ・ユーザーを対象に、スマホがそばにある時のタスク遂行能力を測定する実験を行った。この類としては初めてとなる今回の実験では、たとえ使用していなくても「そこにスマホがある」というだけで、スマホがどれほどユーザーに影響を与えるかに注目した。

【参考記事】iPhoneユーザーは、Androidユーザーとはデートしない?

「スマホを気にしない」無意識の努力が能力を低下

まず1つ目の実験では、参加者にパソコンで一連のテストを受けてもらった。テストは、いい点数を取るには意識を完全に集中しなければならない難易度で、参加者がどれだけ認知能力(データを処理する能力)を発揮できるかを測定するものだ。

テスト開始に先立ち、参加者は全員、スマホの電源をオフにするよう指示された上で、スマホを「伏せてデスクの上に置く」か、「ポケットにしまう」か、「自分のカバンしまう」か、「別の部屋に置く」かのいずれかをするよう無作為に指示された。

テストの結果、最も成績が良かったのは、スマホを別の部屋に置くように指示された参加者たちだった。若干の差で、スマホをポケットやカバンにしまうよう指示された人たちが続き、デスクに置くように指示された人たちの成績は著しく悪かった。

ワード准教授は、「スマホの存在が目につけばつくほど、認知能力が発揮できなくなった」と語り、「(テストを受けた人たちは)スマホのことを意識的に考えているわけではないが、『あることについて考えない』というプロセスが、限定的な認知能力のリソースの一部を使いきってしまう。能力の流出だ」と説明した。つまり、スマホに意識を向けないようにしよう、という無意識の努力の方に、限りある能力が無駄に使われてしまっているのだ。

スマホ依存者が能力低下を防ぐには

別の実験では、スマホ依存がどれほど認知能力に影響するかを調べた。前の実験同様に参加者はパソコンで一連のテストを受けるのだが、今回は参加者に対しスマホを「画面を上にしてデスク上で目につくところに置く」、「ポケットにしまう」、「カバンにしまう」、「別の部屋に置く」のいずれかをするよう無作為に指示した。ただし電源については、一部の参加者のみがオフにするよう求められた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪首相、12日から訪中 中国はFTA見直しに言及

ビジネス

ドイツ輸出、5月は予想以上の減少 米国向けが2カ月

ビジネス

旧村上ファンド系、フジ・メディアHD株を買い増し 

ワールド

赤沢再生相、米商務長官と電話協議 「自動車合意なけ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 5
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワ…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    米テキサス州洪水「大規模災害宣言」...被害の陰に「…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 10
    中国は台湾侵攻でロシアと連携する。習の一声でプー…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 6
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中