最新記事

博物館

失敗を笑って失敗に学べ、スウェーデンに失敗博物館が登場

2017年4月18日(火)11時30分
松丸さとみ

微弱電流が流れる美容マスク (Picture: Samuel West/Museum of Failures)

この夏、スウェーデンに「失敗博物館」と命名された博物館がオープンする。世界の企業が作った「失敗作」が集められた博物館だ。

9割は失敗に終わる

スウェーデンのヘルシングボリに6月7日、「失敗博物館」がオープンする。館長は、自称「イノベーション・リサーチャー」のサミュエル・ウェスト氏だ。企業が商品化して市場に出したものの、さまざまな理由で市場から消えた商品やサービスなど、個人で集めた60点以上を展示する。

matusmaru2.jpg

(Picture: Samuel West/Museum of Failures)

ウェスト氏は、「多く見積もって90%くらいのイノベーションは失敗に終わる」にもかかわらず、成功は賞賛されるのに失敗はまるで臭い物に蓋をするかのように隠され、誰も話したがらない、とCNNに話した。そこで、そうした失敗作を見つけ出してそこから学ぼうというのが、失敗博物館が生まれたきっかけだという。

展示品にはこんな失敗作も

展示作品には、分かりやすいものでは例えばセグウェイがある。ビジネス・インサイダーによると、「交通手段を劇的に変えるはずだったのに、今日ではほぼ単なる高価なおもちゃとして使われている」というのが、失敗作として選ばれた理由だ。

また、コダックのデジカメのように、商品としては大ヒットだったものの、企業がイノベーションをせず事業転換に失敗したという理由で展示されているものもある。かつてフィルムメーカーとして業界を牽引して来たコダックは2012年、日本の民事再生法に相当する米連邦破産法11条の適用を裁判所に申請した。

kodaks.jpg

(Picture: Samuel West/Museum of Failures)

日本人にとって馴染み深い商品も展示されている。ソニーがかつて開発した「ベータ・ビデオ」だ。一定の年齢層以上には懐かしい話になるが、テレビ番組を録画する家庭用のビデオ・デッキが普及し始めた1980年代、「VHS」と「ベータ」の2つの規格があった。日本ビクターやパナソニック、三菱電機が商品展開したVHSと、ソニー、東芝、三洋電機などが商品展開したベータだ。しかしビジネス・インサイダーによると、ビデオとしての性能はVHSより優れていたベータだったが、レンタルビデオ市場を獲得できなかったことでやがて市場から消えてしまったという。

一方で、クスッと笑ってしまう失敗作もある。1990年代に発売された、微弱電流が流れる白い美容マスクだ。顔の筋肉を刺激してリフトアップ効果や肌の調子を整える効果がある、とうたわれたらしい。ただこのマスク、映画『オペラ座の怪人』の怪人や『ハンニバル』のレクター博士を彷彿とさせるデザインだ。暗闇の中、このマスクでお肌のお手入れをしている家族の姿を見てしまったら......恐怖でしかないだろう。失敗作とされたのも無理もないかもしれない。


失敗に込められた大切なメッセージとは

ウェスト氏はこの博物館に大切なメッセージをいくつか込めている。まず、失敗は面白いものであり、博物館を訪れた人に展示品を見て笑ってほしい、というもの。そしてRTに語った、「失敗は成功と切っても切れないもの」であり、「失敗から学ぶことが大切」だというものだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は3日続伸、900円超高 ハイテク株に買い

ワールド

柏崎刈羽原発6・7号機、再稼働なら新潟県に4396

ビジネス

午後3時のドルは一時154.89円まで上昇、34年

ワールド

印インフレにリスク、極端な気象現象と地政学的緊張で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 7

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 8

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中