最新記事

米メディア

トランプ「メディアは国民の敵」、独裁につながる=マケイン議員ら

2017年2月20日(月)18時50分
ニコラス・ロフレド

支援者集会でもメディア批判を展開したトランプ Kevin Lamarque-REUTERS

<政権に対する批判をすべて「偽」と決めつけ、メディアを「国民の敵」と言いふらす大統領は、いずれ国民の言論の自由も奪おうとする>

ドナルド・トランプ米大統領のメディア攻撃はもはや常軌を逸しており、このままでは独裁に道を開くことになると米政界やメディアの有力者が一斉に警戒の声を上げ始めた

トランプが一部メディアを「アメリカ国民の敵」だと指弾した問題をめぐり、日曜朝の各局のトーク番組には米共和党のジョン・マケイン上院議員をはじめとする有力政治家やジャーナリストが相次いで出演し、トランプ批判を繰り広げた。一方、トランプを擁護する立場のラインス・プリーバス大統領首席補佐官は、彼が完全なでっちあげとみなす偽ニュースについての不満をぶちまけた。

【参考記事】米メディアはなぜヒトラーを止められなかったか

古き良き共和党の代表格といえるマケインが、ついにトランプに深刻な懸念を表明したのは大きなニュースだ。「我々には、メディアと報道の自由が必要だ。我々が守らなければならない生命線だ」と、マケインはNBCの番組「ミート・ザ・プレス」で訴えた。「民主主義を守りたいなら、報道の自由、それも多くの場合、敵対的な報道が必要だ。それがなければ、我々はいずれ個人の自由の大半を失うだろう。独裁者はそうやって物事を始めるものだ」

「有害報道」とは何か

米大統領選を通じて、メディアは常にトランプの標的になってきた。大統領に就任してからも、トランプは「偽ニュース」や「不誠実なメディア」への批判を続けた。記者会見では公然と報道陣を罵り、メディアは信頼できないと視聴者に言いふらし、ツイッターでニューヨーク・タイムズ紙やCNNなど特定の報道機関をこき下ろした。土曜にフロリダ州メルボルンで支持者向けの集会を開いた際には、「反対勢力」のメディアがネタをでっちあげており、メディアこそ「問題の大部分だ」と糾弾。その前日にはツイッターで、「偽ニュースのメディアはアメリカ国民の敵だ」と投稿していた。

【参考記事】トランプ旋風を生んだ低俗リアリティ番組「アプレンティス」

それにもかかわらず、プリーバスはミート・ザ・プレスでこう力説した。「大統領は(言論の自由を定めた)合衆国憲法修正第一条を信じている。報道の自由もだ。我々はあらゆるメディアが悪だとは思わない。メディア全体が悪いのではない」。だが「本当に有害なことも起きている。我々の政権はここ10日間で信じられない災厄に見舞われた。リークや偽ニュース、匿名の人物による告発など。そういう類の報道は有害だ」。

トランプ政権はメディアによる度重なるスクープで頭を悩ませている。ホワイトハウスの主流派と非主流派による主導権争いや、マイケル・フリン前大統領補佐官(国家安全保障担当)の辞任のきっかけになった駐米ロシア大使との電話協議の問題、新たに発令される可能性がある大統領令の草案、大統領選中にロシアがサイバー攻撃を行った疑惑をめぐるFBIの調査など、報道で次々に明るみにされた。プリーバスは日曜、一連の報道を「まったくのクズ」だと主張した。

【参考記事】オバマ、記者団に別れ「まだ世界の終わりではない」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送-J&J、米製造拠点に20億ドル投資へ 富士フ

ワールド

トランプ政権、米投資拡大する企業の株式取得は考えず

ワールド

イラン産原油取引に関与したネットワークと船舶に制裁

ビジネス

エヌビディアCEO、TSMC訪問 中国向け新型半導
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自然に近い」と開発企業
  • 2
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精神病」だと気づいた「驚きのきっかけ」とは?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 5
    「このクマ、絶対爆笑してる」水槽の前に立つ女の子…
  • 6
    夏の終わりに襲い掛かる「8月病」...心理学のプロが…
  • 7
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 8
    3本足の「親友」を優しく見守る姿が泣ける!ラブラ…
  • 9
    米軍が長崎への原爆投下を急いだ理由と、幻の「飢餓…
  • 10
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 5
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 6
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 7
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 8
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 9
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 10
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中