最新記事

米中関係

トランプ人事は中国を封じ込められるか?――ティラーソン国務長官就任

2017年2月3日(金)16時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

トランプ政権の国務長官に就任したティラーソン Carlos Barria-REUTERS

トランプ政権の国務長官にロシア寄りのティラーソン氏が就任した。中ロ蜜月が崩れ南シナ海に関しても荒れ模様だが、しかしティラーソン氏は一方では中国にも食い込んでいる。中国はどう見ているのかを考察する。

ティラーソン国務長官就任を批判する中国

2月1日、アメリカの石油最大手エクソンモービル社のCEOだったレックス・ティラーソン氏がトランプ政権の新国務長官に就任した。

ティラーソン氏はこれまで、ロシア政府や経済界とのつながりを厳しく問われていた。というのも、エクソンモービルCEO時代に、ロシア最大の国営石油会社ロスネフチとの間に数十億ドル規模の取引をまとめるなど、ロシアとの取引が多く、2013年にはロシア政府から「友情勲章」を与えられたりしているからだ。そのためプーチン大統領とも非常に仲がいい。

中国でも、そのことに関心が集まり、1月17日付の本コラム「露ハッキング喜ぶ中国――トランプ・プーチン蜜月を嫌い」など、これまで何度も書いてきたように、習近平国家主席はプーチン大統領がトランプ大統領と仲良くなるのを嫌っていた(妬んでいた?)。

オバマ政権ではロシアがクリミアを合併するなどのウクライナ問題により、ロシアに対する激しい経済制裁を加えることによって、政権末期の弱腰さを批判されないようにしてきた。そのためG8からロシアをはずすなどしたために、孤立化したプーチン大統領はおのずと習近平国家主席に近づき「習近平・プーチン」蜜月が続いていた。

だから、トランプ氏が大統領選のときからプーチン大統領を「いい男だ」と認める発言をしていたことに関して、中国では苛立ちのにじむ報道が目立っていた。

そこへプーチン大統領と仲がよく、ロシア経済に食い込んでいるティラーソン氏が国務長官になどなったら、おもしろいわけがない。

おまけにティラーソン氏はこれまで、激しい対中強硬姿勢を見せ、南シナ海に関しても「人工島建設を直ちにやめること」とか「中国は南シナ海の関係島嶼に進入してはならない」など、厳しい発言を繰り返してきた。トランプ大統領の周りには、そうでなくとも「狂犬」(あるいは「戦う修道士」)のあだ名を持つジェームズ・マティス国防長官など、対中強硬派が多い。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランスネフチ、ウクライナのドローン攻撃で石油減産

ワールド

ロシア産エネルギーの段階的撤廃の加速提案へ=フォン

ワールド

カーク氏射殺事件の容疑者を起訴、検察当局 死刑求刑

ビジネス

NY外為市場=ドル、対ユーロで4年ぶり安値 FOM
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 3
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがまさかの「お仕置き」!
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 8
    「なにこれ...」数カ月ぶりに帰宅した女性、本棚に出…
  • 9
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 10
    出来栄えの軍配は? 確執噂のベッカム父子、SNSでの…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中