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米中関係

台湾問題、平和統一でなく「武力統一」を早める――中国政府系メディア

2017年1月25日(水)16時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

台湾の海軍基地を視察する蔡英文総統 Tyrone Siu-REUTERS

 中国の外交部報道官は23日、台湾問題に関して「一つの中国」原則を強調し、トランプ氏を牽制した。中国の環球網は台米の出方によっては平和統一ではなく「武力統一」の時期を早めると警告。一方、台米の動きは?

中国外交部報道官の発言

 1月23日、中国外交部の華春瑩報道官は、「トランプ政権の台湾問題に関して中国はどう考えているか」という旨の記者の質問に、以下のように答えた。

――台湾問題に関しては、「一つの中国」原則は中米関係発展の政治的基礎だということを強調したいと思います。アメリカのいかなる政権であろうとも、これまで両党(共和党と民主党)政府が明らかに承諾してきた義務を守らなければなりません。すなわち、「一つの中国」政策を実施し続け、「中米間3つのコミュニケ」原則を守り、米台関係に関しては厳格に「非政府間の範囲内」に制限するということです。

 このコラムのシリーズでは何度も紹介したので、既読の方には重複して申し訳ないが、初めての方もおられると思うので、華春瑩報道官が言ったキーワードに関して、簡単に説明しておこう。

 ●一つの中国:中国を代表する合法的政府は中華人民共和国のみで、台湾は中国の領土の一部である。

 ●中米間の3つのコミュニケ:1972年2月の「米中共同コミュニケ」(上海コミュニケ)と1978年12月(発表は1979年1月1日)の「中華人民共和国とアメリカ合衆国の外交関係樹立に関する共同コミュニケ」および1982年8月17日の「中米共同コミュニケ」(八・一七コミュニケ)のこと。

 ●非政府間の範囲内:これら3つのコミュニケには、「アメリカ人民は、文化、商務などの非政府間の関係に関しては、台湾人民との関係を保ってもいい」とあることを指す。

台湾の「武力統一」の時期を早めた――米台の挑戦

 中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」の電子版「環球網」は、1月23日、台湾メディアの名を借りて、「トランプ・蔡英文の一つの中国政策に対する挑戦は(中台)武力統一の時期を早めるか」と報道した(リンク先はそれを転載した中華網)。

 それによれば、1月20日にトランプ大統領が就任演説をすると、台湾の蔡英文総統はツイッターでトランプ大統領に英語で祝意を述べ、「民主が、やがて台湾とアメリカを結びつけるだろう」と「民主」を米台の共通点として強調したという。また蔡英文総統はその20分後に新聞で声明を発表し「アメリカこそは国際社会における台湾の最も重要な盟友国だ」と述べたとのこと。さらに同声明文で「対米関係が、すでにある良好な基礎の上に、さらなる発展と協力を推し進めることは、台米双方および国際社会にさらなる利益をもたらすことに貢献するだろう」と述べたと、1月22日のシンガポールの『聯合早報』が伝えたとのこと。

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