最新記事

メキシコ

アボカドからクルマまで 「貿易協定撤廃」のトランプ恐れるメキシコ産業界

2016年11月14日(月)20時14分

11月10日、自動車やアボカドなどメキシコの主要な輸出産業はこの20年間、北米自由貿易協定(NAFTA)の下で拡大を続けてきた。しかし米大統領選で勝ったトランプ氏が公約通りNAFTA撤廃に踏み切れば、成長が断ち切られる危機に直面している。メキシコ市の市場で7日撮影(2016年 ロイター/Edgard Garrido)

 自動車やアボカドなどメキシコの主要な輸出産業はこの20年間、北米自由貿易協定(NAFTA)の下で拡大を続けてきた。しかし米大統領選で勝ったドナルド・トランプ氏が公約通りNAFTA撤廃に踏み切れば、成長が断ち切られる危機に直面している。

 トランプ氏はNAFTAについて、米国の労働者を犠牲にしてメキシコを優遇していると訴え、見直しか撤廃を掲げている。またメキシコとの国境に巨大な壁を作り、メキシコからの輸入品に高い関税を課す可能性も示している。

 1994年のNAFTA発効以来、メキシコの対米輸出は6倍に増え、昨年は約3200億ドルに達した。かつて孤立していたメキシコ経済は投資の拠点に変貌し、工場を建設する外国の大手企業も現れた。

 それだけにトランプ氏勝利の衝撃は大きい。メキシコの全国製造業組合のマルセロ・ヒノホサ会長は「目の前で起きたことが信じられなかった」と述べた。

 トランプ氏の勝利で、自動車業界などメキシコとの自由貿易を支えにしてきた製造業者は新たな圧力にさらされている。

 ノエボ・レオン州自動車クラスター協会のディレクターのマヌエル・モントヤ氏は、NAFTAが廃止されればメンバーにとって「ひどいことになる」と指摘。

 メキシコ製自動車は米国製よりも価格が3000ドル安いため、メキシコから輸入しなければ米国の消費者にも負担増という影響が及ぶと訴える。

 メキシコの自動車産業はNAFTA発効前はほとんど取るに足らない規模だったが、今や世界で最も規模が大きく、成長の速い生産拠点の1つとなり、世界のサプライチェーンで不可欠の存在になっている。

 メキシコの農業にとってNAFTAの影響はプラスとマイナスが入り混じっているが、明らかな勝ち組もあり、その1つがアボカドだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼総統、中国軍事演習終了後にあらためて相互理

ビジネス

ロシア事業手掛ける欧州の銀行は多くのリスクに直面=

ビジネス

ECB、利下げの必要性でコンセンサス高まる=伊中銀

ビジネス

G7、ロシア凍結資産活用は首脳会議で判断 中国の過
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 2

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 3

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を受け、炎上・爆発するロシア軍T-90M戦車...映像を公開

  • 4

    アウディーイウカ近郊の「地雷原」に突っ込んだロシ…

  • 5

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 6

    なぜ? 大胆なマタニティルックを次々披露するヘイリ…

  • 7

    批判浴びる「女子バスケ界の新星」を激励...ケイトリ…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    これ以上の「動員」は無理か...プーチン大統領、「現…

  • 10

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 4

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 7

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 8

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 9

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 10

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中