最新記事

法からのぞく日本社会

ハロウィンのコスプレは法に触れる可能性があります

2016年10月24日(月)12時05分
長嶺超輝(ライター)

肌の露出が過剰なコスプレの制限

 軽犯罪法1条20号は、「公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者」について、処罰(最高で29日間の身柄拘束)する規定を置いている。

 常に手入れを怠らず、筋トレやジョギングで鍛え上げるなどしており、「ハロウィンの日には、自慢のボディで皆から注目を浴びよう」と考えている方は、ボディの露出の程度に注意を要する。

「その他身体の一部」には、乳房、へそ、脇腹なども含まれる(立花書房刊『軽犯罪法』より)。海パンやビキニなどの水着に匹敵する露出度の服で市街地を出歩くことは、軽犯罪法に触れる可能性が高い。また、下半身の露出が極端であれば、軽犯罪法を通り越して、公然わいせつ罪(最高で懲役6か月)で検挙されるおそれがある。

 不特定多数の人通りがありうる場所であれば、屋内か屋外かを問わない。個人の自宅の中であっても、庭や窓ぎわなど、容易に通行人の目に触れる場所であれば成立しうる。

 では、ホットパンツやミニスカートで太ももを晒したり、ローライズで臀部の上半分が見えているデニムを穿いたりしていれば軽犯罪法違反なのか......といえば、一概にそうとも言えない。

 この条文は、適用範囲を狭める解釈の余地が十分にあるからだ。「公衆にけん悪の情を催させるような仕方で」「みだりに」といった言葉で歯止めがかかっている。全体的なバランスからして健全なファッションとして成立していれば、露出度が多少高かろうと、社会の風紀を乱すわけではないと反論することは可能だ(むしろ、それを街中でジロジロ見ようとする側が悪い)。

問題を起こした有名人などに扮したコスプレの制限

 ウケを狙って、話題の政治家や芸能人、スポーツ選手などに扮する人もいる。モノマネをするだけなら問題ないが、調子に乗って、本人が我慢できないほど社会的名誉を傷つける発言をしたならば、名誉毀損や侮辱の罪に問われたり、損害賠償を請求されたりするリスクがある。

 また、社会的名誉は、企業などの法人にも認められている。たとえば、ハロウィンでバイト先の制服を着て、街を練り歩き、ついでにそのバイトの実態や待遇について、一方的な誹謗中傷を具体的に主張してまわれば、バイト先の運営会社に対する名誉毀損に問われる危険性はある。

 取り扱っている商品やサービスの品質に問題がないにもかかわらず、悪いとの嘘を言いふらせば、信用毀損罪や業務妨害罪も成立しうる。

 名誉毀損や侮辱に関しては、された本人が正式に訴えなければ法的な問題にならない。だが、知らないうちに動画がSNSにアップされるなどして、「証拠」が簡単に拡散し、本人が簡単にネガティブ情報をキャッチできてしまう時代だ。この高度情報化社会では、公の場での言動には常に注意したい。

漫画やアニメなどの登場人物を真似たコスプレの制限

 キャラクターもののコスプレについては、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用」(著作権法30条1項)している限りは合法である。自分で着たいコスチュームを自分で作って、外を出歩いている限りは問題ない。

 ただし、そのような私的使用の範囲を超えて、多数の人からの依頼を受けてコスチューム作成を繰り返し、あからさまに儲けを出そうとすれば別問題である。著作物の無断複製として、制作者から提訴や告訴をされかねず、著作権法違反に問われるリスクが伴う。

その限度で "ハロウィンの自由"も制約を受けることになる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想以上に鈍化 失業率3

ビジネス

米雇用なお堅調、景気過熱していないとの確信増す可能

ビジネス

債券・株式に資金流入、暗号資産は6億ドル流出=Bo

ビジネス

米金利先物、9月利下げ確率約78%に上昇 雇用者数
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前の適切な習慣」とは?

  • 4

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 5

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 6

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    映画『オッペンハイマー』考察:核をもたらしたのち…

  • 9

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中