最新記事

タイ

ペット犬の名は「空軍大将」、タイ次期国王の奇行の数々

2016年10月14日(金)15時05分
シボーン・オグレイディ

Damir Sagolj-REUTERS

<タイのプミポン国王の死去に伴い、ワチラロンコン皇太子の国王即位の手続きが進んでいるが、多くのタイ国民は祝福する気になれない。皇太子の常軌を逸した行動の数々に、不安を感じている>(2010年にシリキット王妃の手を引くワチラロンコン皇太子〔写真左〕、右端は妹のチュラポーン)

 2001年、タイのワチラロンコン皇太子の皇太子妃(当時)スリラスミは、王族のメンバーを集めて30歳の誕生日を祝うヌードパーティーを開催した。スリラスミの隣に鎮座するのは、誕生ケーキと「空軍大将フーフー」という名の白いミニチュアプードル。なぜタイ空軍から大将の称号を得たかは謎だ。

 この奇妙でハレンチなヌードパーティーは、2007年にビデオ動画が流出して暴露された。皇太子の将来の王位継承を阻もうとする抵抗勢力が動画をリークした。

【参考記事】タイは麻薬撲滅をあきらめて合法化を目指す?

 ウィキリークスが公開した外交公電によると、駐タイのアメリカ大使ラルフ・ボイスは、パーティーのビデオが流出した数カ月後、大使公邸で開催したパーティーに皇太子夫妻を招待したが、その時も2人はフーフーを連れてきた。

「フーフーは、イブニング用のフォーマルウェアを着て、4本の足にソックスを履いてパーティーに参加した」と、ボイスは書いている。「バンドが2曲目を演奏している間、フーフーはテーブルの上座に飛び乗り、ゲストに出したグラスの水をペロペロとなめ始めた。私のグラスもなめた」

【参考記事】タイはもはや安住の地ではない──中国工作員に怯える中国政治難民

4人目の妻はタイ航空の元CA

 フーフーは昨年2月に17歳で亡くなり、伝統的な仏教式の葬儀の後に火葬された。しかしこの時には、スリラスミは王室から消えていた。皇太子は14年にスリラスミと離婚し、王室は彼女の所持品を持ち出し禁止にした。スリラスミの親族には汚職の容疑がかかっていた。そして皇太子は、既にタイ航空の客室乗務員を4人目の皇太子妃に迎えるつもりでいた。

 いまとなってはフーフーの流出動画も3度の離婚も、皇太子の数々のスキャンダルの一握りでしかない。今週のプミポン国王の死去に伴い、皇太子の国王即位の手続きが進んでいるが、多くのタイ国民は祝福できずにいる。

【参考記事】タイを侵食する仏教過激派の思想

 18歳の即位から88歳で亡くなるまで国王の座にあったプミポンは、国民から尊敬されていた。タイの映画館では、国王への敬礼と国歌斉唱がなければ映画は始まらない。

 プミポンは1946年に兄王が銃殺されたことを受けて即位。以降は静かな芸術家肌の人柄と、社会改革を志向してタイ都市部の発展と中間層の形成を促した功績で知られている。また必要以上に政治に介入しない方針も貫いた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏「停戦は発効」、違反でイラン以上にイスラ

ワールド

ガザの食料「兵器化」、戦争犯罪に該当 国連が主張

ワールド

ドイツ、25年度予算案を閣議了承 投資と利払い急増

ビジネス

独IFO業況指数、6月は予想以上に上昇 景気底入れ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり得ない!」と投稿された写真にSNSで怒り爆発
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 6
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 7
    EU、医療機器入札から中国企業を排除へ...「国際調達…
  • 8
    細道しか歩かない...10歳ダックスの「こだわり散歩」…
  • 9
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 10
    「水面付近に大群」「1匹でもパニックなのに...」カ…
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 10
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中