最新記事

日本経済

「アベノミクスの成果」に黄信号、来年度予算のため赤字国債増発か

2016年8月4日(木)19時08分

8月4日、アベノミクスの再加速を実現するための2017年度予算編成で、歳出増を賄う有力な財源として期待されてきた税収増など「アベノミクスの成果」の確保に「黄信号」が点灯している。写真は安倍首相、3日官邸で撮影(2016年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

 アベノミクスの再加速を実現するための2017年度予算編成で、歳出増を賄う有力な財源として期待されてきた税収増など「アベノミクスの成果」の確保に「黄信号」が点灯している。円高進行などで法人税などの税収が想定通りに伸びていないためだ。他の予算項目の歳出削減は「既得権益」の壁が厚く、財源探しは難航が予想されそうで、民間のエコノミストは赤字国債増発の可能性も指摘している。

過去3年のような税収増、見込めないとの声

 「アベノミクスの成果活用どころではないだろう」──。複数の政府関係者はこう語り、財源問題の深刻さを指摘する。

 これまでは、税収増や歳出削減を念頭に、子育て支援などの恒久財源として「アベノミクスの成果」を活用することが政府内で議論されてきた。しかし、「雲行き」は急速に変化している。

 17年度予算編成の方針に、「アベノミクスの成果」というプラスアルファ分は盛り込まれていない。

 財務省が7月26日に公表した17年度予算編成に向けた「新しい日本のための優先枠」では、1.6兆円の歳出増加枠が示された。これは「経済財政再生計画」の下で、16年度から18年度までの3年間に進める増加枠を維持し、その枠内で歳出内改革を進めるという共通認識が前提となっている。

 今回の経済対策に盛り込まれ、17年度から継続的に対応する計画である待機児童50万人分の保育施設確保や、保育・介護に携わるスタッフの賃上げ2%などに関する恒久的な財源は今のところ固まっていない。

 厚生労働省は、来年度予算案の概算要求(訂正)に保育士・介護士の処遇改善を盛り込む方針。財務省もこの要求には積極的に対応する方針だが、全体的な歳出枠をオーバーする分は、他の歳出を削減することで対応する方針だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国主席「中米はパートナーであるべき」、米国務長官

ビジネス

円安、物価上昇通じて賃金に波及するリスクに警戒感=

ビジネス

ユーロ圏銀行融資、3月も低調 家計向けは10年ぶり

ビジネス

英アングロ、BHPの買収提案拒否 「事業価値を過小
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 8

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中