最新記事

朝鮮半島

中国は北朝鮮を説得できるのか?――武大偉氏は何をしに?

2016年2月4日(木)17時00分
遠藤 誉(東京福祉大学国際交流センター長)

武大偉氏訪朝の目的は?

「では、武大偉が、このタイミングで北朝鮮を訪問した目的は何なのでしょう? 北朝鮮に到着したその日に、金正恩は今月8日から25日の間に地球観測衛星を打ち上げると発表しましたよね。あれは長距離弾道ミサイルの発射予告と同じだと世界は解釈しています。ということは、中国は北朝鮮のミサイル発射をとめることはできないということになりますか?」

 筆者が次の質問に移ると、先方は「おもしろくない」という語調で答えてきた。

「ご存じのように、李源朝(国家副主席)が訪朝しても、政治局常務委員の劉雲山が行っても、あの若造は態度を変えませんでしたよね。武大偉の職位は、李源朝や劉雲山の職位とは比較にならないほど低い。その武大偉が行って、北を抑えることができるとでも思っているのですか?」

「いえ、思っていません。武大偉は六か国協議の座長ですから、その目的で行ったとしか考えていません。でも、今さら北が六カ国会議に賛同するなどということは考えられないでしょ?」

「そう思うでしょうね。あの若造は、ふつうの良識的行動などをする人物ではない。しかし、それでも武大偉がいかなる成果もなしに戻ってくるというようなことをするために訪朝したりすると思っていますか? 中国はそういうことは絶対にしない。表に出たからには、必ずその前に水面下で緊密な外交交渉があり、何らかの見通しがあったからこそ、メディアにも分かる形で行動する。おめおめ、手ぶらで帰ってくるのを知った上で訪朝したりなどはしませんよ」

 なるほど――。

 ということは、中聯部(中国共産党中央委員会対外連絡部)が動いたことになる。中国では北朝鮮との関係は中国政府(国務院)系列の外交部(外務省に相当)ではなく、中国共産党が北朝鮮の労働党と交渉するという、建国以来の習わしがある。

 アメリカはケリー国務長官を1月27日に訪中させて、中国政府高官と会談させた。

 中国は中国共産党と朝鮮労働党が中聯部を通して接触している。
 
 これらの接触の間に、表には出ない「交渉」が行われているということだろう。

 その内容が何であったのかに関しては、中国政府関係者も言わないし、筆者も聞かない。

 ここは限界であり、中国政府関係者から情報を取得する際のキーポイントだ。

 聞いてはならないことは聞かない。

 言ってはならないことは絶対に言わない。

 だからこそ、一定程度までの情報なら取得できる、という状況が続いているのである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ベトナム国会議長、「違反行為」で辞任 国家主席解任

ビジネス

ANAHD、今期18%の営業減益予想 売上高は過去

ワールド

中国主席「中米はパートナーであるべき」、米国務長官

ビジネス

中国、自動車下取りに補助金 需要喚起へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 8

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中