最新記事

ニュースデータ

日本人の知的好奇心は20歳ですでに老いている

高等教育までに低下する知的好奇心は、20歳の時点でスウェーデンの65歳と同レベルに

2016年2月2日(火)15時50分
舞田敏彦(教育社会学者)

低下する意欲 日本の成人の学力は数的思考力などで世界トップだが、新しいことを学ぼうという意欲は低い AnaAdo-iStock.

 子どもの学力の国際比較はよく目にするが、成人の学力ではどうだろうか。世界各国と比較して、日本はどのくらいの位置にあるのだろうか。

 OECDは、子どもだけでなく成人を対象とした学力調査も実施している。国際成人力調査(PIAAC)で、各国の16~65歳を対象に、読解力、数的思考力、ITを活用した問題解決能力を調査している。

 2012年の同調査で、日本の平均得点は軒並みトップとなり、「大人の学力世界一」という見出しが新聞に躍った。一見すると喜ばしい結果だが、別の側面からは日本が抱える深刻な問題が見えてくる。

 それは「新しいことを学ぶのが好き」という、知的好奇心だ。変化の激しい現代社会では、新しいことを絶えず学ばなければならない。そのためには、学び続ける意欲が必要だ。この点の比較をしてみよう。横軸に知的好奇心、縦軸に学力(国際差の大きい数的思考力)を取った座標上に、調査対象の21カ国を配置すると<図1>のようになる。

maita160202-chart01.jpg

 日本は数学の学力はトップだが、知的好奇心は韓国に次いで低い。図表左上の、各国から外れたところに位置している。対極の右下には、米仏と南欧のイタリア、スペインが位置している。こうした国々では、現時点の学力は(相対的に)低いものの、知的好奇心がギラギラみなぎっている。

 10年後の未来のことなど誰にもわからない。近い将来、インターネットをも凌駕する新たなテクノロジーが出現するかもしれない。そんな時代に、躍進の可能性を秘めているのは、日本なのかそれともこうした知的好奇心の高い国々なのか。

 右上には、北欧諸国が位置している。学力と知的好奇心が共に高い理想的なタイプと言えるだろう。フィンランドでは、成人の9割が「新しいことを学ぶのが好き」と答えている。この国では、学校に通う成人の比率も高い(参考記事:日本の成人の「生涯学習」率は先進国で最低)。フィンランドが「生涯学習の先進国」といわれるゆえんだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ブラジルGDP、第2四半期は0.4%増

ワールド

米軍、カリブ海でベネズエラ発の船舶攻撃 麻薬積載=

ビジネス

アンソロピック企業価値1830億ドル、直近の資金調

ビジネス

米財務長官、次期FRB議長候補の面接を5日開始=W
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 4
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 5
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 6
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 7
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 8
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 9
    トランプ関税2審も違法判断、 「自爆災害」とクルー…
  • 10
    世界でも珍しい「日本の水泳授業」、消滅の危機にあ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 8
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 9
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中