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「世間知らず」の日本の教師に進路指導ができるのか

2016年1月19日(火)16時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

 ちなみに、教員よりも社会人の経験年数が長いケースの割合を出すと日本は3.2%しかいないが、アメリカでは32.4%もいる。<図2>は、上記の2つの指標のマトリクス上に、調査対象の32カ国を配置したグラフだ。

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 右上には、アメリカとカナダが位置している。北米では,社会人経験のある教員が多い。中南米のメキシコとブラジル、その他オーストラリア、イギリスもこのグループだ。対極の左下には、日本と韓国、マレーシア、それにフランスとポルトガルもこのグループに属している。学校しか知らない教員が多い国、ということになる。

 日本では、学校とそれ以外の社会の間に深い溝ができている。アメリカの哲学者デューイの言葉を借りれば、学校が「陸の孤島」になっている。

 こうした現状は、変えていくべきだろう。最近、生徒の職場体験学習やインターンシップを実施したり、地域住民の意向を学校運営に反映させたり(学校運営協議会制度)する取り組みが進んでいるが、教員採用の門戸を社会人にもっと開放するべきではないだろうか。

 社会人経験のある教員とそうでない教員をくらべると、職業への満足度や、職務上の有能観(授業をうまく進められているかといった自己評価)は前者のほうが高い、という調査結果が出ている。進路指導や職業指導といった分野でのパフォーマンスの差はかなり大きいのではないかと推測される。そういった実務上の比較研究も、今後の重要な課題になるだろう。

<資料:OECD『国際教員指導環境調査(TALIS 2013)』

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