【就任100日】「異なる世界線」の妄想を好むトランプ...批判派も評価していた政治的洞察力は何処へ
The Emperor Has No Instincts | Opinion

アメリカ国民が期待を寄せた物価高抑制という公約をトランプは早々に裏切った miss.cabul-shutterstock
<物価高対策などでアメリカ国民の心をつかんだが、実際の政策はその真逆を行くもの。「裸の王様」は何を考えているのか>
ドナルド・トランプ米大統領を知的で好奇心に富んだ人物だと考える、思慮のある人間を見つけるのは難しい。組織運営をとっても、トランプが連邦政府などの大規模な組織を円滑に機能させる術を知っていると評価する者はほとんど存在しない。
トランプの政策に激しく反発する人々の多くは、政権が行うことを違憲、違法、非道、杜撰だと考えている。それでもなお、逆の意見を持つ多数のアメリカ市民が存在する。
選挙戦で掲げられた物議を醸す提案の多くを、実際にトランプが実行に移すと多くの人は思っていなかった。そうした人々に対し、トランプの言うことを真剣に、文字通りに受け止めるべきだと警告する者たちがいた。
このようにアメリカ国民の間で意見が割れていることは理解できる。トランプという人物は、常に物議を醸す、分断を生む存在であったからだ。
しかし、政治的立場を問わず、政権ウォッチャーの多くが皆認めていたのは、トランプが極めて優れた政治的洞察力を持っているという点である。
国境封鎖と移民流入の抑制、DEI(多様性・公平性・包摂性)施策への反発、「終わりなき戦争」(特にウクライナ戦争)の終結、政府支出の削減、そしてもちろん、インフレと消費者物価の引き下げ――。
トランプが選挙戦で重視した課題は、アメリカの有権者の多数が抱いていた懸念と一致していた。
(とはいえ、これらの公約を実行に移す過程において、トランプ政権は場当たり的で無秩序、法律などほとんど配慮していない)