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エネルギー

ウクライナ危機で得する意外なあの国

欧州がロシアへのエネルギー依存から抜け出そうとするなか、思わぬ形でイランが「漁夫の利」を得る?

2014年6月2日(月)12時18分
ジョシュア・キーティング

新たな供給源 ロシアに代わってイランの天然ガスに注目が集まる Caren Firouz-Reuters

 ウクライナ問題をめぐり欧米とロシアの溝が深まるなか、欧州諸国は天然ガスの輸入をロシアに依存しない方向にシフトしつつある。思わぬ形でその恩恵を受けそうなのが、世界最大の天然ガス埋蔵量を誇るイランだ。

 イランでは長年の経済制裁によってガス田開発が停滞していた。だが最近、核協議の進展を受けて制裁が一部解除され、開発計画が一気に加速している。ネエマトザーデ商業・鉱工業相は「イランは欧州に天然ガスを供給する信頼できるパートナーになれる」と述べ、イラン南部からトルコまでのパイプライン建設計画に意欲を見せた。

 ウクライナ情勢は、イランの核協議にも影響を及ぼすかもしれない。ロシアは長年イランの後ろ盾となってきたが、核協議ではロシアを含む6カ国がイランに対して共同戦線を取ることもあった。その一枚岩が崩れれば、イランは交渉を有利に進めやすくなる。イランとロシアの間では、原油と物品の交換取引に向けた交渉も進んでいる。

 欧米との和解ムードを演出しつつ、ロシアとも良好な関係を維持する──そんな危ない綱渡りを成功させれば、イランはウクライナ危機の数少ない勝者になれるかもしれない。

[2014年4月29日号掲載]

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