最新記事

シリア

激戦地ホムスの惨劇はどこまで「真実」か

2012年5月14日(月)14時25分
マイク・ギグリオ

 ホムスのVJを数カ月かけてウオッチしてきたウェブスター大学(オーストリア)のアリソン・ラングリーによると、政権側を悪魔のように描き、国際的に受けのいいメッセージにこだわる彼らの姿勢は、多くの紛争に共通するものだ。弾圧の恐怖にできるだけ焦点を当て、反体制武装勢力のことはなるべく取り上げない──ラングリーの論文には、そう語るホムスのVJの証言が収録されている。

 テラウィは本誌の取材のために連絡を取ったマニに、メールでこう返答した。「タイヤを燃やしたのは、ババアムルが猛烈な砲撃を受けていて近づけなかったためだ。私たちは冷血なアサド政権に殺されている。煙に覆われたホムスの空を見せて、(政権側の)砲撃の事実を世界に知らせようと思った」

「彼らは必死で世界にメッセージを伝えようとしている」と、マニは言う。「でも脚色は必要ない。(砲撃は)そこらじゅうで起きているんだから」

 テラウィの映像リポートが終わった後も、燃えたタイヤの煙はまだ渦巻いていた。マニはそれを映し続ける。テラウィがまだ屋根の上に立っていたとき、耳をつんざくような爆発音がとどろき、マニのカメラが揺れた。近くで砲弾が破裂したのだ。

[2012年4月11日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EUが2兆ユーロの次期7カ年予算案提示、防衛と競争

ビジネス

再送米経済活動は小幅拡大、物価は上昇 見通しやや悲

ワールド

イラク・クルド自治区の油田にドローン攻撃、施設損傷

ビジネス

再送-〔アングル〕円安への備え進むオプション市場、
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 2
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏にも送電開始「驚きの発電法」とは?
  • 3
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 4
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 5
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 6
    「巨大なヘラジカ」が車と衝突し死亡、側溝に「遺さ…
  • 7
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 8
    約3万人のオーディションで抜擢...ドラマ版『ハリー…
  • 9
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失…
  • 10
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 6
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 7
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 10
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 7
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 8
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 9
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中