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アングル:円安への備え進むオプション市場、円買い介入時に並ぶ警戒度

2025年07月16日(水)18時52分

 7月16日、外為市場で円の一段安に警戒感が強まってきた。写真は米ドルと円紙幣。2013年2月撮影(2025年 ロイター/Shohei Miyano)

Shinji Kitamura

[東京 16日 ロイター] - 外為市場で円の一段安に警戒感が強まってきた。ドルが3カ月ぶりに149円台を回復するとともに、通貨オプション市場で一段の円安進行に備えるポジションを取る参加者が急増、関連する指標は24年ぶりの円買い介入があった2022年9月以来の高水準に達している。

<リスクリバーサル急変動、円先安観が今年最も強い局面>

オプション市場で話題となっているのが、リスクリバーサルと呼ばれるプットオプションとコールオプションの価格差を示す指標だ。

ドル/円の値動きは理論上、上下ともに確率は同じとなるはずだが、その時々の参加者の相場観が一方向に偏ると、どちらかのオプションが人気となって値上がりし、価格差が大きくなる。このリスクリバーサルで、円買い需要がドル買い需要を上回っていることを示すマイナス幅が縮小、円安進行に備えるオプションを手当てする参加者の増加を示している。

動きが顕著なのは参院選をまたぐ1週間物で、LSEGデータによると、およそ3年ぶりの高水準を付けた。前回2022年9月は、円が24年ぶり安値となる145円台まで下落し、政府・日銀が円買い介入に踏み切った局面。今回は、参院選で与党が苦戦すれば財政拡張への懸念が高まるとして、円先安観が強まっている。

変動の大きい1週間物ほどの過熱感ではないものの、取引量が多く代表的な指標として扱われる1カ月物も同様に上昇傾向で、この日の取引で一時、年初来の最高水準に到達した。円の先安観が今年最も強い局面にあることを示している。

りそなホールディングス・シニアストラテジストの井口慶一氏は「ドル/円の上昇には持ち高調整的な側面もあるが、オプションの動きはさらなる円安に備える人が増えていることを明らかに示している」と話す。

井口氏は足元のリスクリバーサルの動きについて、交渉を経て米国が提示した対日関税率が25%と高水準で、日本に厳しい結果が現実味を帯びてきたことや、日銀の早期利上げ観測が冷え込んでいること、参院選後の財政拡張への警戒感といった懸念が、ここ1週間ほどで立て続けに高まったことが、背景にあるとの見方を示す。

<米株最高値更新も円安圧力を支援>

米国の相互関税発表後に調整売りに押されていた米国株が切り返し、6月下旬以降に再び最高値を更新し始めたことが、最近の円売りを勢いづけている面があるとの指摘も出ている。

バークレイズ証券為替債券調査部長の門田真一郎氏は、ここ数年ドル/円と密接な連動を見せている米国株のリスクプレミアムが、関税政策発表前の水準へ低下してきたことに関心を寄せている。並行して円が売られており「株高を受けて、安全通貨として買われていた円が、売られている様子がうかがえる」という。

ただ、リスクリバーサルの急変に表れたように、多くの参加者が円安に対する備えを取ればとるほど、「織り込み済み」として、一段と円安へ振れる余地は小さくなりやすい。参院選での与党苦戦も、事前の悲観ほどでなければ、円安懸念は急速にしぼむ可能性もある。

ロイター
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