最新記事
AI

グーグルが敗北? ビッグテックが開いた「パンドラの箱」

BIG TECH IN TROUBLE

2023年6月15日(木)21時20分
ブルース・シュナイアー、ジム・ワルド
ソース

PHOTO ILLUSTRATION BY SLATE. PHOTOS BY GETTY IMAGES PLUSーSLATE

<「チャットGPT」以来、注目を集める大規模言語モデル(LLM)。そんな中、メタがLLMのソースコードを公開。オープンソース化がAIにもたらす民主化、進歩、そして大混乱とは?>

2022年11月に対話型AI(人工知能)の「チャットGPT」が発表されて以来、その基礎を成す大規模言語モデル(LLM)に大きな注目が集まっている。

LLMとは簡単に言うと、膨大なテキストデータを学習して質問に対する答えを生成するよう訓練されたAIアルゴリズムのこと。チャットGPTの場合、「GPT」というLLMが基礎になっている。

さっそくマイクロソフトやグーグルがGPTを利用した検索アプリを発表するなど、がぜんGPTに注目が集まっているが、実はフェイスブックの運営会社メタも今年2月、独自のLLMである「LLaMA」(ラマ)を発表している。

ここで注目すべきは、メタがそのソースコードも公開したことだ。

すぐにLLaMAのオープンソース・コミュニティー(プログラムの情報交換や改良を図る開発者や愛好者のグループ)が組織され、あれこれコードをいじり始めた。

その結果、LLaMAはコンパクトになり、ノートパソコンでも実行できるようになり、処理スピードも向上した。

チャットGPTなどと比べると、この件はあまり大きな話題になっていないが、テクノロジー業界に与える影響という点では、はるかに大きな意味を持つ。

この開発プロセスは、大手テクノロジー企業(いわゆるビッグテック)のパワーを奪い、より多くのイノベーションをもたらす一方で、規制当局には難しい課題を突き付けるだろう。

LLMの開発を支配してきたビッグテックは、この「飛び入り参加歓迎」的な開発プロセスが危険な結果につながると警告する。

これに対しオープンソース・コミュニティーの参加者は、強力なテクノロジーが一握りの企業に支配されているよりもいいと反論する。

オープンAIやグーグルが構築したLLMは、数百億バイトにもなる膨大なデータを読み込み、数万個の強力な専用プロセッサで処理し、数十億のパラメータを持つ。

そんなモデルを構築するには、グーグルやマイクロソフトやメタのレベルの資金力と処理能力が必要だ。

ビジネス
「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野紗季子が明かす「愛されるブランド」の作り方
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

タイ自動車生産、11月は前年比11%増 国内向け好

ワールド

英労働市場、求人減少も賃金上昇 中銀にジレンマ

ワールド

スイスの薬価上昇へ、米政権と製薬各社の引き下げ合意

ワールド

ロシア黒海沿岸でウクライナのドローン攻撃、船舶2隻
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 8
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 9
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中