最新記事
習慣

悪癖の原因は「意志の弱さ」ではない──脳の仕組みを知って悪習慣ループを脱出せよ

HOW TO BREAK THE HABIT LOOP

2023年3月23日(木)11時40分
アダム・ピョーレ(ジャーナリスト)
脳の仕組み

ILLUSTARTION BY MALTE MUELLERーFSTOP/GETTY IMAGES

<スマホ、暴飲暴食、たばこ、コーヒー...科学的アプローチで悪い習慣は変えられる>

暴飲暴食を断つ。スマホ時間を減らす。ちゃんと毎日ジムに通う。年の初めに、そんな誓いを(どうせ守れないと知りつつも)立てた人は多いはず。悪いと分かっていても、身に付いた悪しき習慣を変え、あるいは断つのは難しい。

いや、あなたの意志が弱いからではない。習慣の形成には脳神経の働きが深く関わっている。運転中のスマホ操作や同僚のゴシップ探し、ごみのポイ捨てから、人種差別などの卑劣な言動やSNSを通じた偽情報の拡散(放置すれば民主主義の根幹が揺らぐと警鐘を鳴らす専門家もいる)まで、今の世の中で最悪な集合的習慣の多くは、あなた自身の意志の力よりも、脳神経の自然な働きに支配されている。

MRI(磁気共鳴映像法)などの画像診断技術の進展により、今では脳内で「習慣が形成される過程」を手に取るように見ることができ、脳のどこで習慣形成が行われるかも分かってきた。それはどこか? われら人類の進化の最初期にできた場所、ネズミやイルカも含むほとんどの哺乳類の脳にも同じように存在する場所だ。

そもそも習慣とは、それと意識しないでやってしまう行為のこと。だから意識のレベルで改めようと誓っても、簡単にはやめられない。ついポテトチップスの袋に手を出して、食べ始めたら止まらない。気が付けば鼻をほじっていて、SNSで誰かの悪口を書き込んでいる。スマホに夢中で対向車線にはみ出してしまい、気が付いたときはもう手遅れ。それが習慣の恐ろしさだ。

だから習慣を改めるには、その仕組みを理解し、そういう行為が始まるキュー(きっかけ)を見つけ、悪循環が始まる前に、それを断ち切ることが必要だ。

そうは言っても、簡単には断てない。習慣は自然の定め。人は生きるために習慣を身に付けてきた。日々の暮らしに欠かせない単純な作業の数々を軽々とこなしていけるのは、それが習慣化していればこそだ。

南カリフォルニア大学のウェンディ・ウッド教授(心理学)によると、アメリカ人は1日の平均43%をほぼ無意識の作業に費やしている。無意識だから、同時並行で別なことを考えたり、話したりもできる。

「習慣というのは独特な学習システムで、無意識のレベルにある。だから自分でどうにかできるものではない」とウッドは言う。「この点がよく理解されていないので、人は往々にして自分を責めてしまう」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシア海軍副司令官が死亡、クルスク州でウクライナの

ワールド

インドネシア中銀、追加利下げ実施へ 景気支援=総裁

ビジネス

午前の日経平均は小幅続伸、米株高でも上値追い限定 

ビジネス

テスラ、6月の英販売台数は前年比12%増=調査
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索…
  • 7
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 8
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 9
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 10
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギ…
  • 5
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 6
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 10
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 7
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 10
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中