最新記事

ブランド

アメリカ極右が愛するダークヒーローとは? 勝手なイメージ利用に不快感

The Punisher Goes Rogue

2021年4月2日(金)16時21分
ジョン・ジャクソン

210330p52_PNS_01.jpg

フレッドペリーのシャツは極右組織の「制服」に SPENCER PLATT/GETTY IMAGES


PR上の問題もある。ニューヨーク大学法科大学院イノベーション法律・政策センターのジーン・フロマー共同所長は、ブランド側は「消費者を敵に回したがらないことが多い」と語る。「だから法的措置を取るかどうかは、PR上のプラスマイナスを計算した上での判断になる」

また、議事堂襲撃事件の暴徒たちが公式ライセンス商品を着用していたら、たとえブランドイメージが悪化したとしても、マーベルには法的措置を取る根拠がない。

極右団体の「制服」に?

アパレルメーカーのフレッドペリーも、同じような問題に直面している。襲撃に参加した極右組織プラウド・ボーイズが、フレッドペリーの黒地に黄色いラインの入ったポロシャツを非公式の「制服」に採用したのだ。トレードマークのローレルリースを勝手にアレンジしたロゴ入りだ。

フレッドペリーは昨年9月、黒地に黄色いライン入りのポロシャツの販売を打ち切り、「プラウド・ボーイズは全く無関係の団体だ」と声明を出した。

マーベルは、そこまでやる意欲は示していない。それにパニッシャーを葬っても、どくろマークの不正使用は止まらない可能性がある。真の問題は、パニッシャーはゆがんだ正義の味方なのか、ファシスト的な殺し屋なのかが明確でないことかもしれない。

コンウェイがパニッシャーというキャラクターを発案したのは1970年代初頭のこと。最初はスパイダーマンの脇役だった。

ベトナム戦争の影を引きずる当時のアメリカでは、都市犯罪が増加し、政府は国民からの信頼を失い、『ダーティハリー』や『狼よさらば』といった暴力的な復讐を描いた映画が大ヒットしていた。「社会の統制が失われたという感覚」や「公的機関が果たせなくなった役割を担い、秩序を取り戻す私刑執行人の到来」への期待から生まれたパニッシャーは「世相を映す鏡」だったと、コンウェイは言う。

後年、コンウェイはパニッシャーのイメージが独り歩きを始めていることに気が付いた。アメリカの海兵隊員がパニッシャーのどくろのロゴを制服に着けているのをイラクの兵士たちが見て、それをまねているという記事を読んだ時だった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国、5月の政策銀行向け融資残高3カ月連続で減少 

ワールド

ヒズボラ、イスラエルにドローン編隊を発射

ワールド

ロシア動員兵の妻らが早期帰還求め集会、国防省前 逮

ワールド

ハリス米副大統領、ウクライナ和平会議に出席へ=ホワ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナの日本人
特集:ウクライナの日本人
2024年6月11日号(6/ 4発売)

義勇兵、ボランティア、長期の在住者......。銃弾が飛び交う異国に彼らが滞在し続ける理由

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 2

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しすぎる...オフィシャル写真初公開

  • 3

    「サルミアッキ」猫の秘密...遺伝子変異が生んだ新たな毛柄

  • 4

    キャサリン妃「お気に入りブランド」廃業の衝撃...「…

  • 5

    「自閉症をポジティブに語ろう」の風潮はつらい...母…

  • 6

    中国海外留学生「借金踏み倒し=愛国活動」のありえ…

  • 7

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程で…

  • 8

    「娘を見て!」「ひどい母親」 ケリー・ピケ、自分の…

  • 9

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 10

    ヘンリー王子とメーガン妃の「ナイジェリア旅行」...…

  • 1

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 2

    キャサリン妃「お気に入りブランド」廃業の衝撃...「肖像画ドレス」で歴史に名を刻んだ、プリンセス御用達

  • 3

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲームチェンジャーに?

  • 4

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程で…

  • 5

    仕事量も給料も減らさない「週4勤務」移行、アメリカ…

  • 6

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像を…

  • 7

    都知事選の候補者は東京の2つの課題から逃げるな

  • 8

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 9

    「自閉症をポジティブに語ろう」の風潮はつらい...母…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 9

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 10

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像を…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中